最近、日系メーカーが中心になって国際標準を目指している新しい車載通信方式「CXPI(Clock Extension Peripheral Interface)」に注目しています。多重通信方式を採用し、HMI(Human Machine Interface)関連のワイヤーハーネスを削減することを狙ったものです。

 CXPIを開発したのはデンソーで、現時点で同社に加えて完成車メーカー5社、部品メーカー5社、半導体メーカー3社が集ってISO(国際標準化機構)での標準化を目指してます。国際標準の車載ネットワークとしてCANやFlexRayなど「欧州発」の技術ばかりが目立ちますが、CXPIが国際標準になれば念願の「日本発」の技術と言えそうです。

 CXPIと同様のHMI関連部品に使える多重化した車載通信規格としてLIN(Local Interconnect Network)があります。ただLINは使いにくい面があり、採用が広がっていません。日系完成車メーカーの車両の場合、車両全体のワイヤーハーネスに占めるLINの比率は1%程度にとどまっているようです。そこでCXPIは、LINより使いやすくすることを狙って開発されました。

 具体的にはLINに比べて応答性を高められることに加えて、開発工数を抑えやすくしています。詳細は2014年3月30日に発行する「日経Automotive Technology5月号」に記しましたが、CXPIでは通信手順として非破壊型CSMA/CD(搬送波感知多重アクセス/衝突検出)方式を採用します。データを送りたい電子機器が通信帯域を監視し、帯域が空いていればいつでも信号を送れる方式です。

 LINの場合はポーリング方式で、マスターの電子制御ユニットからスレーブのスイッチやモーターに対して、一定間隔で順番に問い合わせる形で通信します。マスターECUに問い合わせられるまでスレーブ機器から信号を送れないので、応答性は低くなりがちです。

 開発工数を減らせるとみる理由は、CXPIの通信手順を決めるソフトウエアが、高級車から普及車まで同じものを使いやすいためです。例えば機能が多い高級車にはスレーブ機器が5個つながる一方で、普及車は2個といった場合はよくあります。LINを使うと、5個と2個の場合でそれぞれ異なる通信手順を設定したソフトウエアを作り、マスターECUに搭載しなければなりません。

 優れた点が多いCXPIですが、国際標準を実現するには技術面の優劣だけではなく“政治面”も重要。ぜひ日系メーカーだけではなく海外メーカーを巻き込んで達成してほしいものです。