日本市場を攻略する米国企業

 この数字から見て取れるのは、米国企業による日本市場攻略の意図だ。なぜなら、添付文書の様式一つにしてみても、薬事法に照らして、一つひとつ「日本語」で作り上げなければならない。その作業前に、届出、第三者認証あるいは承認をクリアするための膨大な費用と労力を必要とする。しかも、日本で売るための機器開発・改造といった地道な努力があるはずだ。

 日本企業自身にとっても大きな課題となっている法適合を、いとも簡単に突破してしまっているようにも見える。大型機器であれ、ごく一般的な消耗品であれ、ともかくすべての機種において、くまなく対策されてきているといえる。

 そうしてまでも、これだけ日本市場に入り込んできている製品群の数を突き付けられれば、アメリカ人の持つ開拓精神の神髄が見て取れる。それには、米国内で飽和しつつある製品を第二の市場に向けようとする志向性もあるだろう。その矛先が日本であることも事実なのかもしれない。

 そのために「日本市場をよく研究している」と感じざるを得ない。市場を知らなければ、日本企業以上の品数を売り込めるはずがない。

実情を理解して、どう打開するかを考える

 こうなったら、一気に米国を追い抜こうなどと考えないほうがよいだろう。ホームで負けているのにアウェイで勝とうなどと考えるのはもってのほかだ。それより、「一矢を報いる」という考え方のほうがはるかに現実的だ。

 なにもすべての面で1位になる必要はないが、米国の良さ、熱心さ、努力といった面を謙虚に学び、それを自社の製品に結び付けることを考えることが大事だろう。

 医療機器の世界でも、「日本の技術」「日本のものづくり」を生かそうという願いは、産官学を通じて言い続けられている。しかし、それらが製品の中で生きる場所を見つけなければ、全く意味をなさない。

 冒頭に示した数字の大きさは、医療機器産業が多品目・多様さという特徴を持つ特殊な業種であることも示している。それならば、「技術」「部材」「加工」といった日本企業の持つ優位性・特異性を商品に生かす道があるはずだ。

 各企業が自分の特性を見ながら、その生かし方を考え、しっかりした方針の下で実行し続けることを期待したい。痛烈すぎるデータだが、転んでもただで起きないくらいの気概がほしい。