先日、デジタルカメラを4年ぶりに買いました。4年前に購入したカメラは光学20倍ズームを売り物とする機種で、被写体に近寄りにくい記者会見などでかなり重宝しましたが、オートフォーカスだとピントが甘くなることが多かったので「そろそろ買い替えどきかな」と思った次第です。

 記者にとってカメラは無くてはならない仕事道具の一つ。しかし最近は、スマートフォンのカメラ機能も無視できないレベルにまで高性能化しています。実際、記者会見などでスマートフォンを使って撮影している同業者を見かけることも多くなりました。私が持っているiPhone 5sも、下手をすると4年前に買ったカメラ以上に綺麗な写真が撮れます。

 私はカメラにあまり詳しくないので、使う機能といえば「風景モード」や「人物モード」、「夜景モード」といったカメラ任せの撮影モードです。マニュアル撮影もしない自分に、果たして専用機が必要なのか。悩みに悩んだ挙句に購入したのが、ソニーの「DSC-RX100」という機種です。

 2012年に発売された機種ですが根強い人気があって、後継機種が出た現在でも製品ラインアップの中に残っています。発売当時の6万5000円という価格からは随分下がったとはいえ、店頭での実売価格は今も4~5万円前後で推移しています。価格比較サイト「価格.com」のデジタルカメラ売り上げランキングでも2014年3月13日時点で、1万円台の低価格品や2013~2014年に発売された新機種を押しのけて、1790製品中3位にランクインしています。価格下落やモデルチェンジが激しいコンパクト型の市場では、異色ともいえる存在です。

 「とは言っても所詮はコンパクト型。スマートフォンよりも『ちょっといい』レベルの写真が撮れたらいいかな」と思っていました。しかし実際にRX100で撮影してみると、スマートフォンとの差は想像以上です。RX100はコンパクトな筐体に、1.0型(13.2mm×8.8mm)のCMOSセンサーとF1.8の大口径レンズを詰め込んでいます。特にCMOSセンサーの1型というサイズは、ミラーレス型カメラにも搭載されるレベルの大きさです(一般的にデジカメはセンサーが大きいほど高画質化で有利と言われています)。カメラのスペックがよくわからない自分でも、画質の明らかな違いが分かりました。根強い人気があるのも頷けます。

 コンパクト型デジタルカメラの市場はスマートフォンに押されて、どんどん縮小しています。カメラ映像機器工業会(CIPA)の予測では、2014年のコンパクト型の世界出荷は前年比26%減の3380万台になる見通し。1億台超だったピークの2008年の3割まで落ち込むそうです。おそらくコンパクト型から撤退する企業も出てくると思います。これまでデジカメメーカーとしてのソニーはあまり意識していませんでしたが、これからもRX100のような尖った製品を出し続けてくれることを願うばかりです。

 先日、ある国内電機メーカーの経営者を取材したとき、「もはや日本勢が規模を追う時代ではない。これからはシェアにこだわらずに、ハードウエアで差異化できる分野に注力すべき」と言っていました。デジカメに限った話ではなく、RX100には日本の電機メーカーが進むべき道のヒントがあるようにも思えます。「良いモノを作れば売れる」時代は終わったのかもしれませんが、他社が真似できない尖った製品を生み出す力があれば、結果は後からついてくるのではないでしょうか。