日経デジタルヘルスでは、医療・健康・介護の技術革新によって生まれる新産業の最新動向をまとめた書籍「日経デジタルヘルス Vol.1」を、2014年3月18日に発刊します。この書籍の編集に携わって印象深かったのが、ゲノム(遺伝情報)解析分野の新たなプレーヤーの登場です。具体的には、ソニーや東芝といった大手電機メーカーが相次いで、ゲノム解析事業に参入し始めました。

 ソニーは2014年1月、エムスリー、米Illumina社と共同で、ゲノム情報プラットフォーム事業を手掛ける新会社「P5(ピーファイブ)」を設立すると発表しました。ゲノム解析サービスを日本で提供するとともに、解析したゲノム情報を関連する医療情報・健康情報とともに蓄積し、ゲノム情報を利用した研究を支援する考えです。将来的には、個人の医療やヘルスケアに役立てるサービスプラットフォームの構築も検討します。

 今回の書籍では、ソニーで医療事業を統括する同社 執行役 EVP メディカル事業ユニット 本部長の斎藤端氏へのインタビュー記事を掲載しています(関連記事1)。このインタビューで斎藤氏は、ゲノム解析事業を、ウエアラブル端末などを使った生体モニタリングの基盤になるものと捉えていると語ってくれました。ソニーが医療分野で構想しているであろう、壮大な事業計画の一端を垣間見た気がします。

 同書籍では、ヘルスケアをエネルギー、ストレージに続く“第3の柱”に掲げた東芝のヘルスケア事業の責任者である綱川智氏(東芝 ヘルスケア事業開発部長)のインタビューも掲載しました。同社も2014年2月のヘルスケア事業説明会で、ゲノム解析事業に参入することを明らかにしています(関連記事2)。ウエアラブルセンサーやバイオセンサーとゲノム解析技術を融合させ、個々人に合った予防や病気の予測の実現に向けた事業を展開する考えです。

 ゲノム解析サービスそのものは、米Google社の関連企業である米23andMe社など、既に先行事例があります。これに対してソニーは「ゲノム解析の判定結果だけを知らせるだけでは意味がない。解析結果を受けて、その人が採るべき食生活や生活行動などをサービス事業者と連携しながら提供していきたい」(斎藤氏)と語っています。同社が重要視しているのはサービス事業者との連携というわけです。東芝の綱川氏もヘルスケア事業では「本物の製品を世に問いたい」とし、既存の製品やサービスとの差異化を図る考えを示しています。

 日本ではまだ根付いていないゲノム解析サービス。産業界とサービス事業者の連携(サ工連携)から、“本物”が生まれることを期待したいと思います。なお、日経デジタルヘルスは「日経デジタルヘルス Vol.1」が受講特典として付いてくるイベント「デジタルヘルス・サミット ~デジタルヘルスの未来2014~」を2014年3月18日に東京都内で開催します。ぜひ足をお運びいただけましたら幸いです。