専門性や立場の異なる複数の識者が半導体の今と将来を論じる「SCR大喜利」、今回のテーマは「米Applied Materials社(AMAT)と東京エレクトロン(TEL)の経営統合を読み解く」である。半導体製造装置業界の大手2社の経営統合の背景には何があるのか、そして業界にもたらすインパクトとは。半導体業界の動きを常に追う5人のアナリスト、コンサルタントに聞いた。
各回答者には、以下の三つの質問を投げかけた。本テーマ最後の回答者は、アドバンスト・リサーチ・ジャパン マネージング・ディレクター シニア・アナリストの石野雅彦氏である。
アドバンスト・リサーチ・ジャパン マネージング・ディレクター シニア・アナリスト
【質問1の回答】半導体投資企業の集約化、日本の半導体産業衰退や資本市場の装置企業評価低下
今回の経営統合は、上位の半導体製造装置企業においても、中長期的な成長を続けることが容易でないことを象徴している。TEL-Applied Holdings B.V.の「FORM S-4」によれば、半導体設備投資(Wafer Fab Equipment Spending)は、2013年度に280億米ドル、2014年度に330億米ドル、2015年度に380億米ドルに拡大するものの、2016年度には370億米ドルに減速すると想定している(図1、2、3)。
半導体メーカーの設備投資は、韓国Samsung Electronics社、台湾TSMC、米Intel社の3社が、2013年に続いて2014年もそれぞれ100億米ドル超と寡占化する。一方、微細化に伴う次世代開発投資負担は各社の重荷になっている。
オランダASML社のEUVリソグラフィ技術および450mm対応装置の開発に対して、2012年第3四半期に上述3社が5年間の研究開発投資として13億8000万ユーロを費やすことで合意するとともに、ASML株を38億4000万ユーロで取得したことは記憶に新しい(Intel社が10%、TSMCが5%、Samsung Electronics社が3%)。
1980~1990年代に半導体設備投資を牽引したDRAM企業は、既に日本には存在しない。NANDフラッシュメモリーの東芝、パワー半導体の三菱電機などが元気なものの、成長が続くファウンドリービジネスにおける日本企業の影は薄い。
また、2社の時価総額を見ると、2000年当時はAMATが900億米ドル、TELが300億米ドルにも達していたが、統合発表直前は前者が200億米ドル、後者が80億米ドル以下と企業価値評価が低下していたことは否めない(図4)。