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手前味噌?電子技術総合誌擁護論

今井 拓司=日経エレクトロニクス
2014/03/12 05:00
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 自動車、建築、医療、農業、エネルギー、工場……。エレクトロニクス技術の応用範囲が拡大の一途をたどっています。この状況を受けて、社内でよく議論になります。これだけ用途が広がってしまうと、日経エレクトロニクスのような総合誌は成り立たなくなるんじゃないのかと。曰く、自動車メーカーの技術者は毎号自動車の記事が載っていることを望むし、建設企業の読者は建築業界の話題を読みたいはず。様々な分野を網羅的に取り上げる雑誌では、毎号同じ分野の記事を載せるわけにはいかないから、読者を引きつけにくくなる。もっと成長産業に絞り込んだ雑誌に変わっていくべきではないのか。

 本当にそうでしょうか。私は違う見方をしています。こういう時代だからこそ、むしろ電子技術の総合誌に価値があるのではないかと。なぜなら、所属する業界は違えども、利用する技術には共通点が多い上、今後は様々な業界の境目が次第に曖昧になって行くからです。

 自動車や建築、医療や農業と、活躍の場は変わっても、電子技術の構成要素は基本的には同じです。自動運転をするにも、インフラを監視するにも、センサーで検知した情報をネットワークで収集し、プロセッサーで処理をして、適切な判断を下す必要があります。電源の確保に知恵を絞り、電磁雑音や熱の問題に頭を悩ませるのも同様です。日経エレクトロニクスの3月3日号で取り上げたロボットヘリは、インフラの監視から物流や医療、自動車にまで関わりがあります。東日本高速道路は橋梁の監視米Amazon.com社は宅配サービス、独Height-Tech社らはAED(自動体外除細動器)の搬送への応用を模索し、仏Renault社は小型電動ヘリを格納できる小型SUVのコンセプト車を発表しています。もちろん、それぞれの分野に特化した部品や技術はありますが、異なる領域にまたがって使われるものも少なくありません。

 こうした幅広い電子技術の最新動向や使いこなし、将来像を知るには、業界ごとの雑誌よりも総合誌の方が適しているのではないでしょうか。例えば建築業界に関わりのある電子技術は、センサーやそのネットワークに限らず、生体認証などのセキュリティー関連技術、植物工場などの環境の制御技術、エネルギーハーベスティングから太陽電池や燃料電池まで多岐にわたります。これだけの話題を取り上げるのは、建築分野の雑誌には荷が重そうです。そもそも、それぞれの業界で「電装化」を担当する電子技術者は、残念ながら業界別の情報誌にとって、ど真ん中の読者ではありません。建築業界の雑誌は建築士、医療分野のウェブサイトは医師の目を一番意識しているのです。もちろん、日経デジタルヘルスのような例外はあるのですが。

 業界を分かつ壁が崩れつつあることも、電子技術の総合誌には追い風になります。日経エレクトロニクスの2月3日号の特集「ソーシャルホスピタル」は、病院の機能が社会全体に拡散していくと主張しました。自動車が運転手の健康状態をモニターし、住宅は体調管理や介護の場になるわけです。スマートフォンが商業施設と連動し、自動運転車が交通インフラとやり取りするといった具合に、異なる業界の機器が手を携える例も増えるはずです。こうした時代には、分野を横断する知識が求められます。総合誌の出番です。

 もう一つの理由は、電子技術者のキャリア形成に関係しています。今後は同一の分野で何十年も活躍し続けられる技術者は、少数派になる可能性があります。デジタル家電や半導体の業界で巻き起こった世界的な企業間競争が、自動車やインフラ、医療機器や農業といった分野で生じても不思議ではないからです。今手掛けている仕事を、いつまでも続けられるとは限りません。自分の活躍の場を常に新しい分野に求めていく電子技術者にとって、幅広い視野で集めた情報が役立つのは間違いないでしょう。ここも総合誌の腕の見せどころです。

 もっとも、総合誌に対する潜在的な需要を我々がうまく取り込んでいるかといえば、まだまだ改良の余地があります。ここは我々編集部の責任です。まずは、ニュースや解説記事の本数を増やして、なるべく多くの分野をカバーしていく予定です。今後も読者の方々の反響を見ながら、よりよい誌面づくりを心がけていきますので、ご期待ください。

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