トヨタ自動車で初代「プリウス」のハイブリッドシステム開発リーダーを務め、その後2003年の2代目プリウスに搭載した「THSII」などハイブリッドシステム全般の開発を手がけた八重樫武久氏(現コーディア代表取締役)が、ハイブリッド車および次世代環境車を展望する連載「ハイブリッド進化論」。第7回の今回は、ハイブリッド化によって復権しつつあるクロスオーバーSUVの魅力と、クルマの未来について語る。

 リーマンショックやエコカーブームの影響で低迷していたクロスオーバーSUVの売れ行きが回復基調にあるようだ。もちろん以前のような燃料消費の多いSUVではなく、ハイブリッドやディーゼルなど低燃費のクロスオーバーSUVに人気が集まっている(図1)

図1 2013年12月に発売開始した新型「ハリアーハイブリッド」
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 個人用途のミニバン、ステーションワゴン、トヨタ自動車の「ランドクルーザー」など本格的なSUVをRV(レクリエーショナル・ビークル)と呼んだ時代もあったが、1990年代に入りトラック派生のフレーム構造ではなく、乗用車と同じモノコック構造のSUVが登場する。1994年のトヨタ「RAV4」は、こうしたモノコック構造クロスオーバーSUVの先駆けである。このRAV4は若者向けとして企画したクルマであったが、1997年に登場したトヨタ「ハリアー」は、「高級セダンの乗り味と快適性を備えたSUV」がキャッチフレーズの高級クロスオーバーSUVの先駆けとなった。

 ハイブリッドシステムの開発を統括していた時期に、自分の足として使っていたクルマが3.0L V6エンジン搭載の初代ハリアー4WDバージョンだった。自分の懐を痛めて買った愛車と言いたいところだが、実は会社から貸与されたクルマで、初代「プリウス」や「クラウン」を選択することもできたが、ハイブリッドではないこの初代ハリアーを選んだ。若いころから、冬はスキー、オールシーズンのヨットとアウトドア派だったが、その時代はまだランドクルーザーは作業用のオフロード車のイメージで、今のスタイリッシュなクロスオーバーSUVがあれば真っ先に飛びついたと思っている。

 週末やバケーションには海や山へとアウトドア用品を積んで行く。冬は雪景色を眺めに、夏は潮の匂いを嗅ぎに、クルマの少ない林道や、崖から海岸への細い荒れた道を走れるクルマ。途中の高速道路やアップダウンの多いワインディング路のドライブも楽しめるだけでなく、日常の通勤やショッピングにも使える1台三役の万能車が欲しいとイメージしていた。そこに登場したのが新型ハリアーだった。アイポイントが高く、車室スペースに余裕があり、さらにパワーに余裕のある3.0LのV6エンジンを搭載したる初代ハリアーが、筆者のようなノスタルジック派を含め、少し金銭的余裕のある週末アウトドア派から支持を得ていたものと思う。これが、プリウスではなく初代ハリアーを選んでみた理由である。

 ややアグレッシブなドライバーである私の実走行燃費は高速道路のロングドライブでも10km/Lをやっと超えるぐらいで、日常の往復20km程度の通勤や買い物を含めると平均燃費は7km/L弱、月2000km超えの使い方では毎週ほぼ満タンの燃料補給が必要であった。燃料補給のたびに、このジャンルをこれからも使い続けるためには低燃費ハイブリッドが必要と痛感していた。