航空宇宙工学は今でも理系の学生に人気があるようですが、日経テクノロジーオンラインのテーマサイト「産業機器・部材」におけるここ1カ月ほどのアクセスランキングを見る限り、航空・宇宙へのあこがれは皆さん大人になっても抱き続けているのかもしれません。最もよく読まれたのは、ライブドア元代表取締役で実業家の堀江貴文氏に宇宙開発事業について尋ねた「堀江さん、スマホ革命でロケットの未来はどうなります?」でした。航空・宇宙関係では、他にも「超音速機」や「無人ヘリ」など興味深い記事が上位に来ています。
自身が手掛ける宇宙開発事業について語る堀江氏。その戦略は、実に明快でした。大まかに説明すると、目標は「1000万~2000万円と非常に低額で人工衛星を打ち上げられるようにする」、コスト削減を実現するための方策は「スマートフォンなど民生機器向けの部品を採用したり、3Dプリンターで部品を造ったりする」というものです。
堀江氏を取材した日経ものづくりの池松記者は後日、「ホリエモンのイメージが変わった」と題する記事を執筆しています。取材前は「若きワンマン経営者」というイメージだったのに対し、取材後は「技術を見る冷静な目や知識の幅広さ」が印象に残ったとのこと。しかし、この「サイトマスター便り」を書いている私(高野)は、逆に堀江氏に抱いていたイメージがより強固になりました。そのイメージとは、「目標に向かって(堀江氏自身が合理的だと思うやり方によって)最短経路で突き進む人」というものです。
人工衛星の打ち上げコストを低減するために堀江氏が取った方策は、理にかなっているように見えます。とはいえ、実際には人工衛星やロケットに詳しい人ほど、信頼性や実現性などの観点から反論があるかもしれません。私が感じているのは、宇宙開発の話題に限らず堀江氏が「極端な戦略」(同氏はそう思っていないでしょうが)をぶち上げ、既存事業者の人たちがさまざまな「反論」を行うことで、結果として産業の発展を妨げていた問題があぶり出されるという可能性です。
個人的に興味深いのは、こうしてあぶり出された問題を誰が解決し、事業で先行するのかということです。堀江氏なのか、既存事業者なのか、それとも漁夫の利を狙う第三者なのか。いずれにせよ、堀江氏のように議論を巻き起こす人がいなければ物事は始まらないわけで、今後も同氏からは目が離せないと感じたインタビューでした。