本連載では、テクノ・システム・リサーチ(TSR)のアナリストに、スマートフォンやカメラ、センサーなどの市場動向に関するレポートを寄稿してもらう。第8回は車載情報機器市場の動向について、同社 研究員の本橋直樹氏が分析する。(日経BP半導体リサーチ)

 TSRでは、自動車メーカーが展開する車載情報機器(In-Vehicle Information:IVI)市場に関する調査を行った。近年の高速モバイルネットワークの普及により、さまざまな製品がインターネットに接続された。自動車でも例外ではない。スマートフォンやデータ・コミュニケーション・モジュール(data communication module:DCM)と車載情報機器を連携させることによるネットワーク化が、自動車メーカーが中心となって積極的に進められている。

 車載インフォテインメントシステムは、ネットワーク接続環境を持つことにより、構成する車載製品の形態やエンドユーザーに提供するサービスに変化を生じ始めている。以下では、その市場動向と今後の展望について解説する。

車載インフォテインメント機器市場の動向

 一般に、車載情報システム(In-Vehicle Infotainment System)を構成するアプリケーションは幅広い。TSRでは自動車メーカーが搭載するOEM(maker option/dealer option)製品の中で、インターネットに接続されることで追加的に機能を拡張できる車載情報機器(カーナビ/ディスプレイオーディオ)を「IVI製品」と定義している(図1)。ネットワーク接続を前提としないディスプレイ非搭載のカーオーディオ製品は対象から除外している。

図1●In-Vehicle Infotainment製品の定義
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 IVI製品市場全体の総出荷数量は2013年に2328万台であり、2014年には2689万台へと拡大する見通しである。製品別にみると、2013年にはカーナビゲーションが約53%(1256万3000台)を占め、ディスプレイオーディオが約47%(1118万台)を占めた。

 このうちディスプレイオーディオは、ナビボードを搭載せず、地図情報をスマートフォンから取得することで低コストに抑えたオフボード・ナビゲーションとして注目されている。スマートフォンとの連携により、カーオーディオという従来の枠組みを超えた製品といえる。北米で搭載が義務化されたことで市場が拡大基調にある車載カメラなど、周辺機器との親和性も高い。そのため、自動車メーカーが展開するテレマティクスサービスにおいても、表示先の車載情報製品としてカーナビに代わってディスプレイオーディオを搭載するケースが増えている。

 こうした背景から、ディスプレイオーディオ市場は今後、カーナビ市場の需要を取り込んで成長し、2015年にはカーナビの数量規模を上回る見通しだ(図2)。

図2●車載インフォテインメント市場の動向
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