更に、IoTではサービス事業者などバリューチェーンを構成する他の業種との競争もあります(「モノのインターネット」では「お客様のために」だけでは不十分)。IoTのビジネス形態の構築はこれからですが、コンテンツでもうけるために端末(Kindle)は採算度外視で安価に提供するAmazon.comのようなサービス事業者も現れるでしょう。その時に、端末を製造、販売する半導体メーカーはどのようにもうけるのか。IoTのデバイスのプラットフォーム化というのは、サービス事業者に端末や半導体を買い叩かれないためにも重要かもしれません。

 新しいハードウエアは、世に出してみないと、どう使われるかわからない場合も多いです。技術を開発してみないと、どのように使われるかわからない。従って、ソフトの開発、ましてやプラットフォーム化は難しい。既に明確にわかっているアプリケーションがなければ、技術を開発してはいけない、というのは言い過ぎでしょう。しかし、ハードウエアの開発とアプリケーションの明確化とプラットフォーム化は、適度なバランスが必要ではないでしょうか。

 現在の日本の風潮で少し心配なのは、このバランスが崩れていないか。端的に言うと、システムLSIの失敗から学ぶことがまだ十分ではないのではないか。既にIoTの有力な市場である車関連では、Googleが主導し半導体メーカーではnVidiaが参加するOAA(オープン・オートモーティブ・アライアンス)やAppleが主導するCarPlayなど、携帯端末と自動車の連携、統合ひいては自動運転などを狙ったプラットフォーム化が始まっています。

 単にハードウエアを開発するだけではなく、ハードのプラットフォーム化や、ハードを制御するソフトウエア、収集したデータの解析技術、ひいてはIoTからどのように収益を上げるかをどの程度、考えているか。こういった点が曖昧なまま、「性能の良いセンサ端末を開発すれば何とかなるのではないか?」となってしまったら、「いつか来た道」になりかねないのではないでしょうか。