社会の至る場所、橋やトンネル、ビル、鉄道などのインフラから農場、工場、さらには自動車、家電、人体などにセンサを配置してデータを収集し、通信網を通じて集めたデータを解析することで新しい知見や価値を生み出そうとするのがIoT(Internet of Things)です。FacebookやTwitterなどのSNSで人間が生み出すテキストデータだけではなく、機械(センサ)もデータを生み出すことから、モノのインターネットとも言われています。

 ビッグデータがデータを解析する側の言葉だとすると、ビッグデータを生み出す端末側の言葉がIoTです。表裏一体の関係にあるIoTとビッグデータに関しては、国立情報学研究所の佐藤一郎教授がコラム「ビッグデータからIoT(モノのインターネット)へ」(関連URL)に大変わかりやすく書かれています。

 さて、このコラムではIoTそのものというよりは、IoTを巡る半導体業界の動きについて触れたいと思います。日本のみならず世界中の半導体メーカーがIoTを次の成長のエンジンに掲げています。なにしろ、「Trillion Sensors Universe」と呼ばれるように、一兆個ものセンサが必要とされるとも言われており(関連URL)、巨大市場が出現する可能性もありますから。

 既に、IntelやQualcommといった、パソコンやスマートフォン向けCPUの主要ベンダの経営トップからIoTを将来の成長の柱にしたいといった経営方針が示されています。一方、様々な機能のLSIを集積化したシステムLSI事業からの撤退が相次ぐ日本の企業や関係者からも、「IoTで日本の半導体復活を!」という声も聞こえてきます。

 上述のようにIoTは応用先が極めて多種多様で、センサや端末などのハードも、ハードを制御するソフトやサービスもまだデファクト・スタンダードは決まっていません。パソコンではIntelやMicrosoft、スマートフォンではQualcommやGoogle、Appleなどに牛耳られてしまい、こういった企業と同じ土俵(市場)では、日本勢が今から挽回することはほとんど不可能でしょう。ですから、これから成長すると期待されるIoTの市場では、日本勢が是非復活を目指して欲しいものです。