社員個人が、そして組織がこのような思考・行動を取ることができれば、多くの「困った」を見つけることが可能になります。要は、「そんなものはどうせ無理だ」、「自分にはできない」、「やっても得しない」というようなネガティヴな発想をどうやって取り除き、潜在的なニーズというチャンスを掴むのかということが重要になるということなのでしょう。

 実はこれを仕組化している会社も存在しています。例えばキーエンスでは、営業マンとエンジニアが一緒に顧客を訪問するとことが日常的に行われています。顧客から、「こんなものはできないだろうか」という声が上がった場合に、それをすくい上げて新製品に繋ぐためにエンジニアが営業と一緒に行動しているのです。

 このように、困っていることにも気づくということが、今そこにある潜在的なニーズを掴む近道になります。そしてそれが「提供価値」と「ニーズ」のマッチングを満たすビジネスの仕組みを生み出すヒントになるのです。このヒントを無視せずにすくい上げることが、これからの時代に我々に必要な能力になってくるでしょう。

 私の以前のコラム『「困った」は新事業開発の母である』にも事例を載せていますので是非お読みください。

 次回は、企業の「提供価値」と「市場のニーズ」のマッチングと三つの鍵について少し考えてみたいと思っています。

生島大嗣(いくしま かずし)
アイキットソリューションズ代表
大手電機メーカーで映像機器、液晶表示装置などの研究開発、情報システムに関する企画や開発に取り組み、様々な経験を積んだ後、独立。「成長を目指す企業を応援する」を軸に、グローバル企業から中小・ベンチャー企業まで、成長意欲のある企業にイノベーティブな成長戦略を中心としたコンサルティングを行っている。多数のクライアント企業の新事業創出/新製品企画・開発等の指導やプロジェクトに関わる一方、公的機関等のアドバイザ、コーディネータ、大学講師等を歴任。MBA的な視点ではなく、工学出身の独自視点での分かりやすい言葉で気付きを促す指導に定評がある。経営・技術戦略に関するコンサルティングとともに、講演・セミナー等の講師としても活躍中。
生島ブログ「日々雑感」も連載中。
中国ビジネス書の翻訳出版本である「中国モノマネ工場――世界ブランドを揺さぶる「山寨革命」の衝撃」の監修・解説も担当した。