新興国の成長やITの進化など、工場や産業機器を取り巻く環境は急速に変化している。その最新動向やビジネスチャンスなどについて、ドイツSiemens社インダストリー部門のCEOであるSiegfried Russwurm氏に聞いた。同氏によれば、生産技術のイノベーションが中国のような新興国で起きてから先進国に波及するという流れが出来上がりつつあるという。(聞き手は、高野 敦=日経テクノロジーオンライン)

――産業機器の分野では、どこにビジネスチャンスがあると見ているのでしょうか。先進国と新興国で、それぞれ教えてください。

Siemens社Executive Vice President, CEO Industry SectorのSiegfried Russwurm氏

Russwurm氏:先進国と新興国で顧客のニーズが明確に分かれているわけではないのですが、先進国では一層の効率化を求める声が多いと思われます。一方、新興国ではこれから成長する企業に焦点を合わせていきます。新興国の企業は、今のところ基礎的な技術だけを使っているかもしれませんが、成長に伴ってより高度な技術も使うようになるでしょう。我々は基礎からハイエンドまで幅広い技術のポートフォリオをそろえているので、そうした要望に対応できます。

 先ほど、顧客のニーズが明確に分かれているわけではないと申し上げましたが、先進国と新興国は“ギブ・アンド・テーク”の関係になりつつあります。

――それはどのような意味でしょうか。

Russwurm氏:先進国から新興国に技術が移転するなどという、一方的な関係ではないということです。ドイツと中国の例でいえば、もちろんハイエンドの技術がドイツから中国に移転されているのですが、逆に中国からドイツに来る技術や生産プロセスもあります。中国の技術や生産プロセスといっても、Siemens社として開発したものですので、ドイツの顧客にとっても信頼に足る水準を満たしています。