企業や大学との関係も変わる

 エビアンの動画CMは、ガラス窓に映った登場人物の姿が赤ちゃん時代の自分になってしまうという設定のものだ。登場人物が踊ると同じ振りで鏡の向こうの赤ちゃんも踊る。最後に初めて“Live young!”というメッセージとエビアンの商品画像が出る。

 このほか、英国とオランダに本拠を置く日用品大手Unilever社のブランド「Dove(ダヴ)」のキャンペーン動画「Real Beauty Sketches」は、米Advertising Age社が発表した2013年のバイラル動画の年間視聴回数ランキングで1位になった。いずれの動画CMも、大量のテレビCMを投下して認知度を高めるという従来の手法ではなく、生活者に見たいと思ってもらえる作品性の高い動画を通じて、企業の「顧客への約束」をじわじわと伝えようとすることが狙いと言えるだろう。

Unilever社の「Dove」ブランドの動画CM。再生回数は、6200万回を超えている。

 スマホやタブレット端末の普及も相まって、インターネットの動画CMでは今後、娯楽性の高いものや、心に染み入るものなどを配信する取り組みがこれまで以上に増えていきそうだ。録画や動画サイトによるテレビ番組のタイムシフト視聴が広がれば、視聴者の側も鑑賞するに足るCM動画のみを、動画コンテンツの一つのジャンルとして選択視聴していくことになるだろう。

 動画は大学教育の分野にも広がっている。大規模公開オンライン講座(MOOC:massive open online course)と呼ばれるもので、講義映像をデジタル化し、オンラインでいつでもどこでも無償で受講できる。米国のHarvard Universityと、Massachusetts Institute of Technology(MIT)が共同で開発した「edX」や、米Stanford Universityの教授らが立ち上げた「Coursera」などが有名だ。日本でも東京大学や京都大学が講義映像の提供を始めている。今年2月にはNTTドコモとNTTナレッジ・スクウェアが、日本初のMOOC「gacco」(ガッコ)を開設すると発表した。

 先日、あるセミナーを受講したとき、隣の席に座っていた大学生が「iPhone」で講義の様子を収録していた。大学に限らず、プロ・アマを問わず、講義や講演の様子を動画共有サイトに投稿する動きが進みそうだ。オンライン受講の機会が増えれば、大学に対する評価の視点も、どれだけ良質な講義を提供しているかに移っていくかもしれない。

 実は、動画サイトとの関係が大きい娯楽に「ゲーム」がある。若年男性を中心に相変わらずゲームは人気が高い。キリン食生活文化研究所の調査では、ゲームは10代後半男性、20代男性ともに「最近の関心事」の1位となっている。

 日本国内における2013年のYouTube再生数ランキングでは、トップ10位の中に必殺技紹介などゲーム関連の動画が2本入った。ニコニコ動画では、ゲームの実況プレー動画が人気ジャンルとして確立している。