インターネットで知って、選択的にテレビ番組を見る

 実際、インターネットを通じた動画閲覧時間は若年層を中心に増加している。2013年2月に総務省が実施した「青少年のインターネット利用と依存傾向に関する調査」によれば、高校生、大学生ともに、1日に60分以上をインターネットの動画閲覧に費やしている。社会人は若干低くなるが、それでも同じく40分強の閲覧時間である。一方「平成23年度版 通商白書」によれば、10~20代ではテレビの視聴時間が減少している。

 例えば、テレビ番組やテレビCMをリアルタイムにテレビで見るのではなく、後からYouTubeなどで視聴するという行動は、若年層の間ではいまや普通のことになっている。人気のテレビドラマや面白いテレビCMなどは、新しいもの好きの友人や「キュレーター」(情報を収集・選別・編集してインターネット上で拡散してくれる人、まとめサイト)からの情報で知るという。

 その情報に興味を覚えたらインターネットで検索して、そこで初めてテレビのコンテンツに接触する。昨年大ヒットしたテレビドラマ「半沢直樹」も、Twitterのタイムラインがそれ一色になって初めて見るようになった若者が少なくないようだ。若年層ではテレビによる従来型の受け身での視聴から、動画サイトを利用した選択的視聴が主流になりつつあるのかもしれない。

どんな動画が見られているのか

 では、動画サイトで、いったいどんな種類の動画が視聴されたり、投稿されたりしているのだろうか。

 YouTubeで圧倒的に人気なのは音楽系の動画だ。一般の人が「歌ってみた」「踊ってみた」動画も人気である。アーティストが登場する公式のミュージックビデオを除いて、日本国内で2013年にYouTubeで最も多く再生された音楽系動画は、「恋するフォーチュンクッキー STAFF Ver.」だった。

 これは、人気アイドルグループ「AKB48」の公式チャンネルで、関係するスタッフが音楽に合わせて踊る様子を投稿した動画である。このほかにも企業や地方自治体などさまざまな団体が集団で踊る様子を投稿している。5位にはファッションブランド「サマンサタバサ」のスタッフが踊るバージョンがランクインしている。

 私の知人も事業部ごとに担当する部分が割り振られ、会社を挙げて動画を作成し投稿したそうだ。一緒に練習することを通じて、普段は客先での仕事が多く、顔を合わせることが少ないメンバー同士の一体感が高まったと話していた。動画の撮影と投稿は外に向けた広報宣伝活動だけではなく、社内の求心力を高める効果もありそうだ。

 2012年に韓国人歌手PSYの「江南スタイル」が世界的に大人気となったのは記憶に新しい。たくさんのパロディーバージョン動画が投稿されることでさらに拡散した。こうした動画はインターネット上の口コミで一気に広がることから、バイラル(ウイルス性)動画と呼ばれており、企業からも注目を集めつつある。

 YouTubeが発表した、世界における2013年の人気動画トップ10(音楽系を除く)には、スウェーデンのVolvo社や、フランスの食品大手Danone社のミネラルウオーター「evian(エビアン)」ブランドが制作した動画がランクインしている。どちらも企業の「売らんかな」の姿勢を前面に出さず、「企業が顧客にとって重要な価値を提供しようとしていること」を上質な映像で描写したものだ。最後まで見てはじめて、どの企業の動画CMかが分かるところも共通だ。

 Volvo社のトラックの動画CMは、アクション俳優のJean-Claude Van Damme(ジャン・クロード・ヴァンダム)さんの神妙な顔の大映しで始まる。その後、実は彼は並走する2台のトラックのサイドミラーに片足ずつ乗せていることが分かる。徐々に2台のトラックが離れて、180度の開脚に至るのだ。これも最後に「安全性と正確性を検証するテスト」というテロップが流れる。