―― そのシステムが、サービスのカギですね。

今村 60サイト以上の提携サイトからのファッションアイテムの画像データや値段といった商品情報をクロールする技術を独自に開発しました。ただ、集めるだけではなく、既にクロールした情報の変更箇所だけを引っ張ってくるような他のWebサービスではあまりやっていない仕組みも実現しています。

 画像解析技術を導入していることも特徴の一つですね。ショッピングサイトにある画像は、背景の色が違っていたり、枠が付いていたりします。そこからアイテムだけを切り抜く加工が必要です。この加工もシステム側で自動的に処理しています。単純にWebサイトをクロールしてデータを集めるだけではなく、サービスに合った形にコンテンツを加工する処理もあまり他にはない強みだと思います。

 実は、こうしたサーバー側の処理こそがiQONのサービスを考える際の最も大きなポイントでした。独立前に金山に「技術的にできるか」と聞かれて「できる」と答えたところが出発点です。

―― 2週間というかなり短いサイクルで機能開発を進めていると聞きました。どのように管理しているのですか。短期間で開発したけれど、実際にはユーザーに使われなかったり、バグが多くなってしまったりといったことが起こりそうですよね。

今村 世の中にないものを作っているという側面があるので、開発した機能が本当にユーザーの琴線に触れるかどうかは、出してみないと分かりません。ただ、社内では企画段階での議論にかなり時間を割いていると思います。「本当にそれを開発する意味があるのか」ということを常に意識しています。

―― つまり開発サイクルの期間は短いけど、その前に開発・実装するための機能について議論を重ねているということですね。

築山 その議論は、常に社内でやっていますね。「なぜ、なぜ、なぜ」と。例えば、改善点や新機能の洗い出しについてお題をメンバーに投げて、社員に「なぜ行う必要があるのか」も含めて考えてもらいます。

―― 開発リーダーの役割ってなんでしょうか?

今村 開発リーダーではありますが、CTOという経営的な立場もあります。でも、自分の中では完全は分けてはいません。iQONというものを通じて技術的に何を実現できるのか、システム全体を見ながら調整していくのが自分の役割だと思います。技術的な基盤がなければ、画期的なサービスは実現できません。技術を使って何ができるのかを常に考えています。

 基本的に開発陣は、デザインや機能の企画について「それはできない」とは言わないことをモットーにしていますね。ユーザーのためになる機能やデザインならば、絶対に実現しますよ。

 まだまだサービスの認知率を高めなければならない時期です。まずは、有名なファッション誌や、ファッション系のショッピングサイトと同じくらいの認知度にならないと。ユーザーの限られた余暇時間の中で、いかにファッションに触れてもらえるようにできるか。それがテーマだと思っています。