―― 順調だったのですね。

今村 実は、このまま行けると思ったら、そうでもなかったんです。知り合いの女性に意見を聞くなど、ユーザー目線で開発していたつもりでしたが、それでは十分ではなかったのでしょうね。

築山 アプリをリリースした直後は、物珍しさでユーザーが増えたという印象だったのだと思います。

―― それでどうしたんですか。

今村 ユーザーに向き合う時間を設けて、ユーザーインタビューを繰り返しました。コーディネートを上手に作るユーザーを中心に。中には、1日に3~4時間も使ってくれるヘビーユーザーもいました。そこで、あまりにも機能が多すぎるので「あまり考えなくても使える」ことを基準に、アプリをシンプルにものに刷新しました。

―― 当初は、ユーザーインタビューを行っていなかったんですか。

今村 もちろん、知り合いの女性に聞く程度はやっていました。でも、本格的に取り組み始めたのは、アプリの投入でユーザーが増えてからです。ビデオを撮影してヘビーユーザーの行動を分析しました。分かったことは、難しい機能は使いこなすことができないということです。

築山 ユーザーの分析は、社内の大きな意識改革につながったと思います。例えば、ユーザーの操作を見ていると、画面上のボタンに触れれば簡単にできる操作なのに、そのボタンを押さなかったりするんです。

 iQONでアイテムを見て、リアルな店舗に商品を買いに行くユーザーも少なくないんですが、アプリの画面をそのまま保持してお店まで行くんです。開発者からすると、画面のスクリーンショットを保存しておけば簡単だろうと思っていました。でも、そうではないんですよね。開発者が「ユーザーは100%知っているだろう」と思い込んでいたことは、良くて半分くらいしか理解されていないんだと痛感しました。

―― ユーザーのリテラシーは人によってだいぶ違いますよね。開発の際には、どこに照準を置いていますか。

築山 基本はリテラシーがあまり高くないユーザーに合わせて開発しています。とにかく簡単に使えることを意識していて、例えば、漢字をなるべく使わないなど、直感的に分かりやすい設計を心掛けています。例えばiPhoneを使用している女性ユーザーの大半は「LINE」を使っています。だから、LINEの操作に近い方が分かりやすいなど、そういうことをメンバーで議論をしながら開発を進めています。

―― iQONの特徴は、コーディネートに使えるアイテム数の多さですよね。アイテム数は、どのように増やしているんですか。

今村 金山を中心に提携のショッピングサイトを増やす交渉をしています。以前は、ショッピングサイト側でも、iQONでアイテムを使えるようにする作業が必要だったので協力していただいていました。でも、今は自動的にクロールして情報を集められるようにiQONのシステム側で自動化しています。