社内で徹底的に「なぜ、なぜ、なぜ」を繰り返す

 iQONの開発チームは現在、2週間ほどの短期間の開発サイクルでシステムやアプリの機能を見直しています。短い開発期間によるバージョンアップやバグの改善はユーザーフレンドリーのように見えますが、いいことばかりとは限りません。諸刃の剣の側面もあります。

 例えば、使われない機能を実装してしまう可能性があります。つまり、スケジュール優先の考え方が進み過ぎると、新しい機能を開発すること自体が目的となってしまうということです。「本当に必要なものを追加しているか」ということを検証する時間がなくなってしまうこともあるでしょう。

 それを防ぐ一つの手法が、前述したユーザーインタビューです。iQONでは、もう一つのプロセスを機能開発に取り入れています。それは、「企画や仕様を決める時に、とにかく『なぜ、なぜ、なぜ』の議論を社内で徹底的に繰り返す」ということです。最終的に、CEOの金山氏をはじめとする開発メンバーが納得しなければ開発には着手しません。

 実際に手を動かす開発サイクルは2週間で動いていますが、その前段階に社内でとことん議論しているというわけです。「開発の企画をプロジェクトに落とし込む段階で、定量的、定性的な側面で徹底的に機能の必要性を議論しています。その議論から脱落した企画は実装されません。もちろん、見本がないサービスを作っているので、実際に機能をリリースしてみないと本当の反応は分からない。そこは難しいところです」(今村氏)。

 今回は、ファッション系の人気アプリ「iQON」を支える技術開発の手法について考えてきました。今回のヒットの要諦をまとめると、次の二つが見えてきます。

■今回の「ヒットの要諦」
その1:
技術者自らがユーザーに会って、必要な機能か見極めるべし!
その2:
合い言葉は「なぜ、なぜ、なぜ」、開発前に徹底的に議論せよ!

 技術の開発者自身が率先してユーザーの意見に耳を傾ける「ユーザーファースト」の開発。アプリの世界ではハードウエアに比べて後から機能を簡単に付け加えやすいだけに、この姿勢がとても重要になっています。これを実現するには、ユーザーの目に触れるアプリのUIだけではなく、水鳥の足のように水面下で動くシステム側の工夫が不可欠です。

 「ユーザーにとって本当に必要なものは何か」を見極めるには、ユーザーの声だけではなく、もちろん開発者側の発想力、企画力が大切でしょう。開発する機能について、社内で企画し、徹底的に議論を尽くす。短期間の開発プロセスの中で、これを意識的に続けることは容易ではありません。

 ユーザーにファッションの「美しさ」や「かわいさ」などの要素を楽しんでもらうには、それを支えるコンテンツを実現する企画力や開発力、そして継続的にサービスを進化させて行く運用力などの複数の力が求められます。

 次回は、iQONを開発した今村氏らのインタビューの肉声をお届けします。