ユーザーと開発者の間にある溝を痛感

 自分たちが作り出した商品が、本当に価値を持っているかどうかを知るには、顧客の声を聞くしかありません。これを継続していくこと、それを開発陣が率先して手掛けることが、商品の改善につながる大きな一歩になります。営業やマーケティングの担当者に任せっぱなしでは、なかなかうまく進みません。技術者が自ら、一緒にサービスを育ててくれるユーザーを囲い込む姿勢が必要なのです。

 iQONでは、ヒアリングを定期的に繰り返したことが副次的な効果も生んでいます。ヒアリングした女性ユーザーの中から社員になる人も現れたとのこと。この取り組みをキッカケに、社員の女性比率も増えていったそうです。ユーザー視点の開発による仲間づくりは、さまざまな可能性を秘めているということでしょう。

 アプリ開発ではユーザーが触れるUI部分に目が行きがちですが、実はもっと重要な技術要素があります。それは、サービスのシステム基盤となるサーバー側の技術です。iQONでも、サービスの特徴であるユーザーがファッションアイテムの画像を組み合わせて、コーディネートを作る機能をサーバー側の処理技術が支えています。

 iQONでは、コーディネートに使えるアイテムの数が200万点以上に上ることを前回紹介しました。大量のアイテム写真をそろえる仕組みはどうなっているのでしょうか。

 具体的には、ファッションアイテムの画像データや商品情報などを数十のショッピングサイトから自動でクローリングして集めています。ショッピングサイトでは商品情報が毎日に更新されていて、新しいアイテムが加わるだけではなく、既存アイテムの価格などが変わるかもしれません。それを収集する処理を効率的に行うにはシステム開発での工夫が不可欠です。

 実は、もう一つ技術的に難しい点があります。ファッションアイテムの画像データをコーディネートに使いやすくするには、画像データからアイテムだけを切り抜き加工することが必要です。iQONでは、色などの特徴量を用いてアイテムを判別し、自動で切り抜くシステムを運用しています。

 華やかに見えるファッション系のサービスではありますが、システム的には水面下でかなり高度な独自技術を使っているわけです。自動で画像データを読み込んで大量のアイテムを管理するデータベースや、画像解析によるアイテムの加工、アイテムの検索システムなどの処理が動いています。

 本当のiQONの強みは、水面下で稼働しているサーバー側のシステムにあると言っても過言ではないでしょう。このシステムがあるからこそ、ユーザーは何の違和感もなく、ファッションアイテムを選んでコーディネートを楽しめるわけです。

 「提携しているショッピングサイトから最新の情報をクローリングする技術は強みだと思います。単に情報を取得するだけではなく、変更箇所だけを読み込んでくるようなシステムは他のサービスにはあまりないでしょう。画像解析でアイテムを切り抜く処理を自動で処理しているサービスもなかなかないと思いますよ」(今村氏)

 こうしたサーバー側の仕組みを実現するには、システムの構想段階で、拡張性や安定性があるアーキテクチャーにしなければなりません。この基盤の上に使いやすさを意識したUIが実装されているからこそ、効果が高まるわけです。