本連載は事例情報の提供を目的としますが、事例はまた、表層的に真似すると失敗の元にもなると言われます。

 では、事例を表層的に真似て失敗するとは、具体的にどのようなことを指すのでしょうか。まずは、この点から始めます。

事例を真似して失敗するパターン

 著者らは、R&Dマネジメントの体系を図1のように捉えています。

図1●R&Dマネジメントの体系
図1●R&Dマネジメントの体系
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 図1の左から右へ、経営・事業目標達成に紐付いたR&D戦略を立案し、戦略と整合した仕組みを構築するとともに、仕組みを有効活用する能力向上や運営を行うことまでを示しています。すなわち、R&Dマネジメントの改革は、戦略、プラットフォーム、業務推進能力を三位一体で進める必要があります。

 例えば、改革活動の花形であるプロセス改革に取り組む場合、内外製方針、組織構造、業務分掌、人員配置、人材採用、人材育成といった組織・人材戦略や、機能別組織能力向上、日常業務運営、チームマネジメント、セルフマネジメントといった組織運営の改革などと歩調を合わせながら進めなければ、成功することはできません。

 特に注意が必要なのは、プロセスやプロジェクトマネジメントの改革です。これらの改革は、意識の高いメンバーによるモデルテーマから取り掛かることで、短期的な成果を獲得しやすい改革領域です。しかし、モデルテーマの成果獲得後に活動が失速することも少なくないのです。

 意識の高いメンバーによる取り組みからスタートし、その後周囲への展開を図ろうとすること自体は、改革活動の定石の1つとして非常に有効です。ただし、並行して組織・人材、組織運営などの改革の準備を進めておかなければ、改革活動は長続きしません。

 今回は、他社と同様の取り組みを実施したが、表層的なものに留まり、組織体制や運営体制の準備が不十分でプロジェクトが中断した事例を紹介します。