この2月は想定をはるかに上回る積雪で交通網が麻痺し、突発的な自然災害による食料調達の不安を身近に感じさせた。このことは、特に買い物弱者が多い高齢者にとって死活問題にもなり得る。世界が経験したことのない超高齢社会を迎える日本では今後、さまざまな場面で同様の課題が噴出するだろう。

 世界や日本のマクロ環境の変化や、独自の消費者調査などを基に今後5年間の消費トレンドを予測したレポート『消費トレンド 2014-2018』(日経BP社)の著者で、消費者動向に詳しいキリン食生活文化研究所 所長の太田恵理子氏は、雪に閉ざされた生活から食料調達の実態と食の未来に思いを馳せる。(日経BP未来研究所

シニアはコンビニが頼り

 2月に2週間連続で雪に閉ざされた東京。高速道路は通行止め、電車やバスは運休や大幅遅延など、雪への弱さが改めて露呈したが、もう一つ明らかになったことがある。足元がおぼつかない状態では、食料など日常品の買い物に出掛けることが大変なのだ。

 2月最初の雪の日、私は西日本にある実家に行っていた。後期高齢者の両親の二人暮らしだ。夜から降り出した雪は朝には10cm近く積もった。母は雪の中、食料の調達に出かけるという。家にあるものだけでは昼・夜の2食分は賄えないからだ。

コンビニの新しいスタイルも登場している。図は、生鮮食料品を拡充したコンビニ「ローソンマート」のイメージ。ローソンが2014年2月に展開を始めた
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 外に出たはいいが、高齢者が多いマンションでは、出口までの雪かきをする人もいない。歩道に出ても水っぽい雪に足が取られ、ゆっくりとしか歩けない。

 この調子だと、普段なら徒歩10分の食品スーパーまで小一時間かかりそうだ。あきらめて、食料品を売っている一番近くの店に行くことにした。コンビニエンスストアだ。

 普段から母は、手作りのほかに出来合いの総菜などの中食を活用して、夕食の皿数を増やしているのだという。二人暮らしの上、ふたりとも食が細くなっており、素材からの手作りでは大量にできてしまい、せっかくつくった料理が残ってしまう。また何品も作るのが体力的に辛くなっているのも事実だ。