微小重力で骨量が減るのはなぜ?

 2014年2月に実施が予定されている実験の1つが、「メダカにおける微小重力が破骨細胞に与える影響と重力感知機構の解析」というテーマの生命科学実験だ。古くなった骨が吸収され新しく形成された骨に置き換わる「骨の再構築」。その過程において、骨の吸収をつかさどる破骨細胞と骨の形成をつかさどる骨芽細胞の関係などを解析し、将来的には老人性骨粗しょう症の新たな治療法の開発に役立てようというものだ。

 微小重力環境では、骨量が減少することが知られている。その要因と推測されているのが、「骨吸収と骨形成のバランスの崩れ」である。重力の減少により破骨細胞の働きが強まるのではないかと考えられているのだ。

 そこで、同実験では、実際に生きたメダカを微小重力環境に持ち込み、重力の減少が本当に破骨細胞を活性化させるのか、活性化させるとしたらどう活性化させるのかなどを調べる。それにより、微小重力がメダカの破骨細胞に与える影響やそのメカニズムを解明し、これまでに見えていない骨吸収の新しい機構を明らかにしていくことで、老人性骨粗しょう症の新たな治療法の開発につなげたいという意図がある。

 同実験で使用するのは、遺伝子組み換えのメダカだ。蛍光タンパク質で破骨細胞と骨芽細胞のそれぞれを識別できるようにしたメダカで、専用の容器に入れられている。メダカは同容器内で生きており、容器ごと蛍光顕微鏡にセットすることにより骨に局在する破骨細胞と骨芽細胞の様子を生きたまま観察できるようになっている。その様子は、地上の研究者からも見られる仕組みになっている。

 そのメダカは、2014年2月6日1時23分(日本時間)にロシアのソユーズロケットで打ち上げたロシアの補給船「プログレスM-22M」によってISSに輸送済み。同実験の代表責任者は、東京工業大学大学院生命理工学研究科教授の工藤明氏である。