2500回以上のEV充電行動を分析

 同プロジェクトからもう一つ興味深い成果が得られた。EVの充電行動が「時間帯別料金(TOU:Time Of Use)によって電力消費量の少ない夜間にシフトできる実証結果である。

 ミューラー地区は、約1.3平方キロメートルのエリアに50軒のEV所有者が集まる、米国でも有数のEV密度の高い地域である。ミューラー地区の30軒のEV所有者を無作為に選択し、2013年6月1日から8月31日まで2500回以上の充電行動を分析した。

 1日のEV充電による電力消費量の推移を、TOUを導入した所有者と未導入の所有者に分けてみると、TOUによって充電が夜中にシフトされることが分かる(図3)。ピーク時間帯の午後3時から7時の間は、TOUを導入している所有者の電力需要がTOUを導入していない所有者の値より下にあるが、夜中0時からそれが逆になり、明け方の5時までTOUを導入している所有者の電力需要が大きくなる。

図3 平日におけるEV充電による電力需要の推移
青い線がTOU(時間帯別料金)サービスを受けるEV所有者、緑の線がTOU契約をしていない所有者のEV充電の需要。赤い線は充電行動による想定電力需要(出典:米Pecan Street)
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 TOUを導入していない通常の電気料金の所有者は、EVの充電の22%をピーク時間帯の午後3時から7時の間に行う。一方、TOUを導入した所有者は、充電の12%しかピーク時間帯に行わない。TOUを導入して、ピーク時間帯の料金を高くすれば、多くのEV所有者がピーク時を避けて充電することが分かる。

 「EVを所有している家庭では、その充電が電力消費の大きな比重を占める。しかし、それは制御可能でピーク時を避けて夜中にシフトすることができる」(同氏)。