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筐体からICまで「炭化」競争が始まる

野澤 哲生=日経エレクトロニクス
2014/02/17 05:00
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 日経エレクトロニクス2月17日号の特集記事は「炭素から新産業」。カーボンナノチューブ(CNT)やグラフェンといった各種の炭素材料が既存の材料、例えばシリコン(Si)に代わる材料としてエレクトロニクスの主役になる見通しについて説明しています。

 Siは半導体材料としては必ずしも性能が高くなく、競合する候補材料が何度も現れるのですが、なぜかずっと勝ち残ってきました。でもそろそろ本当の限界が近づいています。そのポストSiの大本命が、CNTやグラフェンといった炭素材料です。

 これらの炭素材料の特徴はあまりに多くてとても一言では言えませんが、できるたけ簡単にまとめると、数ある電子/半導体材料の中で最も細いか薄く、しかも軽くて強くて熱を伝えやすく、さらに電子が動きやすい、といったところでしょうか。さらに将来は、材料の調達、精製コストがSiに比べて非常に安いという特徴も加わるでしょう。これらの特徴から、近い将来には、軽くてフレキシブルかつ丈夫で超高性能、超高感度のデバイスや機器が格安で作れるようになると考えられています。さまざまな乗り物や電子機器が、筐体から次第に炭素材料に置き換わる「炭化」が進みそうです。10年ほど先には高性能なマイクロプロセッサーまでが炭化している可能性もあります。

 その動きはもう始まっています。例えば、旅客機のBoeing 787に炭素繊維強化樹脂(CFRP)を提供したことなどで知られる東レは2層CNTを用いたタッチパネルを2014年に出荷するとしています。さらに、同社は単層CNTを用いる薄膜トランジスタ(CNT-TFT)をフレキシブル基板上に試作(関連記事)。フレキシブルな基板上で、しかも印刷技術を用いて作製したTFTとしては非常に高い性能です。東レは、このCNT-TFTを2016年前後に実用化する計画です。

 1991年に発見されたCNTの実用化がここに来て急に進展しているのには、製造技術の急激な進展があります。高純度の単層CNTを量産する技術がほぼ確立し、しかも金属型や半導体型といった違いで分離できるようになりました。東レの高性能CNT-TFTもその分離技術を利用しています。

 東レのTFTに匹敵する技術開発は国内だけでも複数の例があります。そして日本だけではなく、今世界中がこの炭素デバイスの開発競争でしのぎを削っています。興味深いのは、それぞれ国や地域によって、最も注力する炭素材料の種類が異なる点でしょう。

 例えば、米国ではCNTを用いた研究が盛んです。一方、欧州では、グラフェンの実用化に、EUから10年間で1400億円以上の研究開発費が見込まれています。韓国もグラフェンの研究が非常に盛んです。

 中国は、CNTとグラフェン、両方で研究開発と実用化が進んでいます。CNTのエレクトロニクス材料としてのタッチパネル実用化第1号も中国企業でした。総投資額ははっきりしませんが、相当な額が開発につぎ込まれています。炭素材料のナノテクでは、中国が世界をリードしている状態です。

 心配なのは、炭素デバイスにおける日本の実用化技術の出遅れです。いくつかの調査(例えば英BBCの記事)では、グラフェンに関する特許数トップは中国。次に、米国、韓国が続きます。CNTについても同様で、つい4~5年前までは日本は米国についで2位でしたが、今は4位かそれ以下に落ちてしまいました。

 さまざまな研究開発で日本のプレゼンスが低下しつつありますが、この炭素デバイスの実用化競争での出遅れはこの先数十年のハイテク競争での負けにつながりかねません。幸い、研究では日本はまだ高い水準にあります。これから数年間の取り組みが分かれ道になりそうです。

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