「SCR大喜利」、「2014年の半導体/エレクトロニクス業界を占う【技術動向編】」をテーマとして、2014年に注目される技術開発の動きについて、伝説的な技術者や現役技術者、半導体ユーザーなど4人の識者に聞いた。第2回の今回は、微細加工研究所 所長の湯之上 隆氏を回答者として招き、以下の三つの質問について聞いた。

湯之上 隆(ゆのがみ たかし)
微細加工研究所 所長
湯之上 隆(ゆのがみ たかし)  日立製作所やエルピーダメモリなどで半導体技術者を16年経験した後、同志社大学で半導体産業の社会科学研究に取り組む。現在は微細加工研究所の所長としてコンサルタント、講演、雑誌・新聞への寄稿を続ける。著書に『日本半導体敗戦』(光文社)、『電機・半導体大崩壊の教訓』(日本文芸社)、『日本型モノづくりの敗北-零戦・半導体・テレビ-』(文書新書)。趣味はSCUBA Diving(インストラクター)とヨガ。

【質問1】2014年、ブレークする可能性が高いと半導体技術は何か?
【回答】 MediaTek社のスマートフォン用プロセッサの低価格化技術

【質問2】2014年、半導体業界が解決に向けて注力すべきと考える技術課題とは?
【回答】 EUVリソグラフィの量産適用

【質問3】2014年、半導体業界に大きな影響を与えると考える電子技術、機器、サービスは?
【回答】 自動運転車

【質問2の回答】EUVリソグラフィの量産適用

 “EUVリソグラフィは筋悪技術”と酷評する人が多い。また、ArF液浸+多重露光で1ケタ台ナノメートルの微細化の実現が市民権を得つつある現在、今さら100億円を超える投資が必要なEUVリソグラフィで13.5nmが加工できても意味が無いという人も少なくない。

 しかし私は、EUVリソグラフィは最先端微細化ツールではなく、コスト削減ツールとして使うべきだと思っている。装置単価だけを見ればEUVリソグラフィ向けはArF液浸向けの2倍以上になる。しかし、パターン形成に関わる全ての装置とプロセスでコスト比較をすれば、液浸+多重露光よりEUVリソグラフィの方が低コストになるという試算がある。さらに、液浸+多重露光は単純な繰り返しパターンにしか適用できないが、EUVリソグラフィならそのような設計制約が無くなる。

 LSIはMooreの法則通り高集積化し、それに伴ってトランジスタ1個当たりのコストを低減し続けてきた。例え1ケタ台ナノメートルのパターンを加工できようとも、液浸+多重露光はトランジスタ1個当たりのコストの増大を招く。それは40年以上に渡るLSIの歴史に背くことになる。Mooreの法則の存続の解はEUVリソグラフィしかないと考える。