「SCR大喜利」二つ目のテーマは、「2014年の半導体/エレクトロニクス業界を占う【技術動向編】」である。2014年に注目される技術開発の動きについて、半導体関連技術の開発で豊富な経験を持ち、大きな成果を挙げた技術者や半導体ユーザーなど4人の識者に聞いた。第1回の今回は、DRAMセルの開発で数々の先駆的な業績を残し、元Spansion Japan代表取締役社長として経営面での視点も持った慶應義塾大学 特任教授の田口眞男氏を回答者として招き、以下の三つの質問について聞いた。

田口眞男(たぐち まさお)
慶應義塾大学 特任教授
田口眞男(たぐち まさお)  1976年に富士通研究所に入社とともに半導体デバイスの研究に従事、特に新型DRAMセルの開発でフィン型のキャパシタ、改良トレンチ型セルの開発など業界で先駆的な役割を果した。1988年から富士通で先端DRAMの開発・設計に従事。高速入出力回路や電源回路などアナログ系の回路を手掛ける。DDR DRAMのインタフェース標準仕様であるSSTLの推進者であり、命名者でもある。2003年、富士通・AMDによる合弁会社FASL LLCのChief Scientistとなり米国開発チームを率いてReRAM(抵抗変化型メモリ)技術の開発に従事。2007年からSpansion Japan代表取締役社長、2009年には会社更生のため経営者管財人を拝受。エルピーダメモリ技術顧問を経て2011年10月より慶應義塾大学特任教授。

【質問1】2014年、ブレークする可能性が高いと半導体技術は何か?
【回答】 先端MOS技術の新しい分野への応用

【質問2】2014年、半導体業界が解決に向けて注力すべきと考える技術課題とは?
【回答】 センサーのさらなる発展

【質問3】2014年、半導体業界に大きな影響を与えると考える電子技術、機器、サービスは?
【回答】 自動化関連の技術、および機器をインテグレートする電子技術

【質問1の回答】先端MOS技術の新しい分野への応用

 CMOS技術はスケーリング則をバックボーンに微細化を達成しロジックICの高速・高集積化を可能にしてきた。しかし、その限界が語られるようになった。近年にも3次元チャネル構造や結晶ストレインによる効果を利用して、さらに微細化している。ただし、写真製版技術による比例縮小(=2次元的縮小)が王道とすれば、それから逸脱して無理に延命を図っているという見方もできるだろう。

 一方で、扱える周波数が数十GHz以上に達し、高集積化とは別の世界への窓口が見えてきた。すなわちミリ波技術との組み合わせで、新しい機能素子が生まれる可能性がある。本来化合物半導体に適した分野であるが、SiベースならばCMOS回路を組み入れられるメリットがある。既に何年も前から学会では報告されていた内容であり、サプライズなブレークにはならず静かに浸透するものと思うが、そろそろ高集積化以外の微細デバイスの応用が加速されてよい時期である。