1月に米国で開催された民生機器関連の展示会「2014 International CES」。スタートアップ企業が集まるフロアの一角で、小さなブースが多くの参加者を集めていた。

 展示されていたのは、LEDを用いたスマートフォン向けのカメラフラッシュ「iblazr」。イヤホンジャックに差し込んで手軽に使える製品だ。2次電池を内蔵し、1回の充電で1000回のフラッシュ撮影に対応。スマートフォンのアプリケーション・ソフトウエアと連動した明るさの調整や赤目防止の機能なども備える。価格は49米ドル(約5000円)。民生機器市場に新しい技術を届けることを目指す開発チーム「Concepter」が手掛けた製品だ。

CESに出展していたスマホ用カメラフラッシュ「iblazr」(左)と、スマホ用ケース「Lunecase」の試作版(右)
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 実は、この製品、以前からインターネットでは少なからず関心を集めていた。開発資金を一般消費者から広く集める資金調達手法、クラウドファンディングの代表サービス「Kickstarter」で資金を集めた製品だったからだ。「クラウド」は「クラウドコンピューティング」の「クラウド(cloud)」ではなく、「群衆」を意味する「crowd」である。つまり、不特定多数の人からインターネット経由で「ファンディング(資金調達)」するサービスだ。

 iblazrの開発プロジェクトは2013年9月に、調達目標に設定した5万8000米ドル(約600万円)の約2.7倍に当たる15万6789米ドル(約1600万円)を獲得した。資金を出した一般消費者は2633人。1米ドルから300米ドル以上の段階的な金額設定で、その見返りの中心は、開発した製品を得ることである。いわば、開発前の商品を見て先行予約で購入している構図だ。

 Concepterは、クラウドファンディングを活用した次なる製品開発にも乗り出している。「Lunecase」というスマートフォン向けのケースだ。スマートフォンが発する電磁波で発電し、ケース背面のLEDを光らせるのだという。

 クラウドファンディングはこの2年ほど、機器開発の新しい資金調達手法として大きな関心を集めている。KickstarterのWebサイトには日々、多くのユニークな製品が登場している。機器だけではなく、アート作品やマンガ、ファッション、映画、音楽、出版などさまざまな開発プロジェクトが並ぶ。同サービスを運営する米Kickstarter社によれば、2009年4月のサービス開始以来、5万6000件のプロジェクトに対し、560万人が総額9億7500万米ドル(約1000億円)を出資している。

 日本でも、クラウドファンディングのサービス提供に乗り出す動きが広がっている。ハイパーインターネッツが提供する「CAMPFIRE」や、オーマの「READYFOR?」などが代表例である。プロジェクトは機器開発だけではなく、東日本大震災の被災地支援といった社会的課題の解決を目指すプロジェクトから、アイドルグループの活動支援まで多彩だ。