過去2回の連載で、DITA(Darwin Information Typing Architecture)について「文書(ドキュメント)をまるで工業製品のように取り扱う規格」と感じられた方も多いのではないだろうか。DITAによる文書制作の最大の特徴は、トピックと呼ばれる文書部品を作成し、この文書部品をマップと呼ばれる文書の設計図によって組み立てるところにある。

 工業製品における部品がそうであるように、文書部品もまた日々改良され、改良された部品を組み立てた文書もまた、良品へと成長していく。DITAにより、文書は工業製品と同様に市場のニーズに合わせて磨き上げていく対象として、取り扱うことが可能になるのである。

 工業製品のオペレーションとメンテナンスにおいて、核になる文書の質が向上するということは、より良いユーザー・エクスペリエンスの提供、リピーターの増加、補用品販売の増加、不具合の際の修理がすぐ済む(一発修理)といった成績の向上により、その事業の競争力を高めることを意味する。DITAを導入する背景には、一般的に知られている「文書制作の効率化」だけではなく、「事業の競争力強化」という、あまり多く語られていないが極めて重要な2つ目の視点が存在しているのである。

 従来のDTP(Desktop Publishing)によるブック指向から、DITAによるトピック指向へと文書制作のスタイルを変革した場合、[1]コンテンツの作成、[2]コンテンツの管理、[3]文書の発行、といった3つのフェーズそれぞれにおけるアプローチも、ブック指向とは異なったものとなる。今回は、DITAによる文書制作で「実際に何をしなければならないのか」、それぞれのフェーズにおける要点を解説する。

* 筆者らが属するDITAコンソーシアムジャパンは、DITAに関するユーザー事例や技術情報を紹介するセミナー「DITA Festa2014」を2014年11月4日(火)・5日(水)に富士ゼロックス本社(東京・六本木の東京ミッドタウン)で開催する(参加費無料、事前登録必要、定員200人)。詳しくはDITAコンソーシアムジャパンのWebサイトを参照。