製品を試作してみたら、思ったような機能、性能が得られず、対応に追われてしまう。このような事態に陥る理由の1つは、製品や部品の「詳細な形状」を先に考えて、それにとらわれて発想が広がらなくなることといわれる。特に、機械設計でそうなる危険性が高い。

 電気設計の場合は、例えばプリント回路基板(PCB)のレイアウトを検討する前に、回路を設計する段階がある。回路設計では、機能を発揮する回路を考えることが大事であり、部品の配置やPCBの形状は考えない。つまり機能の検討と、形状や配置の検討が分かれている。しかし、機械設計は必ずしもそうではないため、電気設計者から見ると「機械設計者はいきなり形状の検討から始める」と不思議に思うことがあるようだ。

機能の検討と形状の検討は別

 形状を決めるより先に、機能や性能を十分に確保できるように検討する必要があると言われても、機械設計の場合は具体的にどう検討を進めればよいか、決まった方法はこれまでなかった。そこをカバーできるのではないか、と期待とともに注目されているのが「1Dシミュレーション」である。

 1Dシミュレーションでは、製品の動作原理や、機能を発揮する状況をブロック図で表現した計算モデルを構成し、シミュレーションを実行する。ブロックはユニットや部品に相当し、ブロックの中は方程式(数式)で記述する。

 製品の強度が十分か、使用中の温度がどうなるかといったシミュレーションは2Dや3Dの形状に基づく計算になるが、1Dシミュレーションは形状によらない、2Dや3Dのシミュレーションよりも抽象化したモデルを用いる(図1)。1D-CAEとも呼ばれる。

 計算時にコンピュータに掛ける負荷は1Dシミュレーションの方が小さく、モデルを修正しながら何回も計算することで深い設計検討が可能になる。方程式を用いるため、電気、機械、流体、熱といったさまざまな分野が関わる現象を表現しやすいことも長所である。

図1●1次元シミュレーションのモデル
図1●1次元シミュレーションのモデル
電気、機械、流体、熱といったさまざまな分野(ドメイン)にまたがるシミュレーションが可能。計算対象の挙動を数式で記述する。
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