NEアワード候補技術紹介(4):
中空の管内で電波を飛ばす“電波ホース”

東北大学 電気通信研究所 教授の加藤修三氏

 東北大学 電気通信研究所 教授の加藤修三氏のグループは、金属被覆した樹脂製の管(ホース)の両端にミリ波の無線機を設置し、その間を数Gビット/秒で通信可能なシステム「電波ホース」を開発した。

 一般にミリ波は、距離減衰が大きいため、送受信機を見通し環境で利用することが前提になる。さらに通信距離を確保するためには、マルチアンテナを使ったビームフォーミングなどの技術が必要になる。

 加藤氏のグループが開発した電波ホースでは、送信機が発した電波が、ホース外側の金属膜で反射を繰り返しながら受信機に到達する。このため、マルチアンテナのような仕組みが不要な上、送信機と受信機の間に障害物があるときにホースを回り道させてミリ波信号を通せる。

金属被覆した管の両端にホーンアンテナを接続して実験を行った(図:東北大学)

軽さが魅力

 電波ホースの適用先として、まずは車載ネットワークを想定している。現在の車載ネットワークは配線の重さが車両1台当たり数十kgにも達しており、軽量化が期待されているからだ。そこに電波ホースを適用すれば、有線の場合には不可欠だった金属線を除去して中空にできるため、配線を軽量化できる。

 加藤氏のグループは、自動車で採用されているワイヤーハーネスとほぼ同じ外径の6.5mm(内径は6.0mm)のホースで実験を行い、4m以上の距離を約3Gビット/秒で伝送できることを確認した。「4mあれば、車両の中央付近に設置したセンターユニットから、車両の前方と後方に十分に信号を届けられる」(加藤氏)という。