専門性や立場の異なる複数の識者が半導体の今と将来を論じる「SCR大喜利」、今回のテーマは「2014年の半導体/エレクトロニクス業界を占う【業界動向編】」である。2014年、どのような点に着目して大きなインパクトを及ぼす可能性がある情報を収集・分析すべきか、半導体業界の動きを常に追う5人のアナリスト、コンサルタントに聞いた。

 各回答者には、以下の三つの質問を投げかけた。今回の回答者は、野村證券 グローバル・リサーチ本部 エクイティ・リサーチ部 エレクトロニクス・チーム マネージング・ディレクターの和田木哲哉氏である。

和田木 哲哉(わだき てつや)
野村證券 グローバル・リサーチ本部 エクイティ・リサーチ部 エレクトロニクス・チーム マネージング・ディレクター
和田木哲哉(わだき てつや)
 1991年東京エレクトロンを経て、2000年に野村證券入社。アナリストとして精密機械・半導体製造装置セクター担当。2010年にInstitutional Investor誌 アナリストランキング1位、2011年 日経ヴェリタス人気アナリストランキング 精密半導体製造装置セクター 1位。著書に「爆発する太陽電池産業」(東洋経済)、「徹底解析半導体製造装置産業」(工業調査会)などがある。

【質問1】2014年の半導体業界で、注目している動き・出来事は何でしょうか?
【回答】 FinFET、3D-NAND、TSVの「3Dのトリプル特需」

【質問2】2014年の半導体市場に、大きな影響を及ぼすと考える機器やサービスは?
【回答】 IOT/IOE

【質問3】2014年の半導体業界で、その動きに注目している企業はどこ?
【回答】 東京エレクトロンと米Applied Materials社

【質問1の回答】FinFET、3D-NAND、TSVのトリプル特需

 半導体製造装置にリサーチの重きを置いている私の立場では、装置需要を大きく増加させる可能性がある、FinFET、3D-NAND、TSVの三つの3D化に大きな関心を持っている。足元、ファウンドリおよび有力メモリ・メーカーがFinFETの導入に動き、韓国大手は3D-NANDの量産に自信を深めつつある。下火になったTSVも、米韓の大手企業が最低でも4社、少量量産に動こうとしている。

 消費電力の低減、ゲートばらつきの抑制に効果が高いFinFETは、プロセス難度が非常に高い。このため、イールド特需が出る可能性があり、期待している。3D-NANDは既存のフラッシュメモリーと比較して、まだコスト高となっている模様だ。韓国大手企業が、どこまで歩留りと生産性を向上させることができるのかに注目している。量産開始となる14年には、装置の需要も相当発生しよう。TSVでは、DRAMのメモリキューブは14年は少量量産に留まる見込み。このため、装置メーカーには、まだ引き合いはほとんど行っていない模様だ。ただし、ニッチ市場をキッチリと抑え、製造がこなれてコストが下がっていけば、中長期的に採用が拡大していく可能性がある。今年の動きに注目している。