製造業にとって「世界の工場」と言えば、中国を思い浮かべる方が多いと思います。では、ポスト中国はどこなのか?これを調べるところから、2月号の特集1の作業が始まりました。木崎編集委員と共にこの特集を担当した近岡記者が、2013年4月から2014年1月半ばまでに日本経済新聞のプレスリリースサイトに掲載された、新工場や生産増強に関する日本企業の発表を調べたところ、特定の国々に集中していることを見出しました。ブラジルが11件、メキシコが16件、ベトナムが13件、インドネシアが22件、タイが12件に達していました。これらは、中国の14件にほぼ匹敵するか、それを超える件数になります。ちなみに他の新興国は多くても4件にとどまりました。

 こうしたトレンドをとらえ、まとめたのが2月号の特集1「成長市場で造る~ブラジル、メキシコ、ベトナム、インドネシア、タイ」です。本特集では、新時代に入る国内製造業のグローバル生産の動向とともに、ブラジル、メキシコ、ベトナム、インドネシア、タイのそれぞれの市場で新工場や生産増強に果敢に挑んだ国内メーカーの詳細な事例を掲載しました。ここでは、フォークリフト市場で世界最大手企業である豊田自動織機がブラジルで稼働させた新工場など、日経ものづくりにとって「王道」とも言える事例だけでなく、お菓子や乳製品などを手掛ける明治がタイに構築したヨーグルトの生産ラインなども取り上げました。同社がタイに設けたプレーンヨーグルトの生産ラインは、現在、想定の10倍の注文が舞い込み、生産が追い付かない状況が続いています。生産ラインをフル稼働させ、当初計画の2~3倍の量を生産しているとか。本特集では、日本メーカーがどのような考えで海外の生産拠点を検討し、そして実際にどういった壁に直面し、その壁をどのような知恵や努力で突破していったのか、紹介しています。生産関連の読者のみならず、設計開発系の読者の方々にも面白く読んでいただける内容と自負しております。

 グローバル生産に続く特集2は「3D単独図」です。3D-CADの普及がすっかり進んだ現在でも、2D図面が必要となる局面は少なくありません。3Dモデルは形状を確実に伝えることができますが、ものづくりに必要な情報は形状だけではありません。ましてや、製品設計で作成した形状と金型設計などの後工程で必要となる形状が異なる場合もあります。こうした背景から、3Dモデルに製品特性や管理情報などのさまざまな情報を追加した3D単独図の概念が生まれました。こうした3D単独図を活用することで、例えば3Dモデルと2D図面を併用するというムダがなくなります。

 近年、電機や自動車などの各業界が、3D単独図を普及させようと積極的に活動しています。こんな中、3D単独図の効能と課題を検証しようという取り組みが始まりました。その取り組みの詳細を本特集でお伝えします。担当するのは、この分野を長く取材してきた中山記者。専門記者ならではの深い内容にどうぞご期待ください。

 最後にお知らせがあります。「ものづくり塾・生産技術コース」で新連載が始まりました。テーマは「押さえておきたい射出成形のツボ」。40年以上続く射出成形技術の専門教育機関である「日精スクール」で多くの受講生の指導に携わってきた著者が、射出成形の基礎知識と成形の要点を解説します。どうぞよろしくお願いいたします。