ユーザーの建物や敷地に太陽光発電システムを設置して電力を販売する(写真:SolarCity社)
ユーザーの建物や敷地に太陽光発電システムを設置して電力を販売する(写真:SolarCity社)
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Mosaic社の過去のプロジェクトリスト(写真:Mosaic社)
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Mosaic社のソーラークラウドファンディングの仕組み(図:Mosaic社)
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ソーラークラウドファンディングの先駆けは?

 太陽光発電システム分野でのクラウドファンディングの先駆けは、カリフォルニア州オークランドに拠点を置く米Mosaic社である。インターネットを通じて、太陽光発電システムの設置や運営に必要な資金を、多数の人から調達するサービスを提供している。

 同社が投資の受付を始めたのは、2013年1月にさかのぼる。受付開始からわずか24時間で、最初の四つのプロジェクトの資金調達を完了した。2011年の会社設立時の社名は「Solar Mosaic」だったが、太陽光発電以外の再生可能エネルギーにサービスを拡大するため、2012年に現在の「Mosaic」に改名した。

 Mosaic社は、融資を求めるプロジェクト開発業者と、太陽光発電に興味があって安定した見返りを求める個人投資家を結ぶ、オンラインプラットフォームを提供する。いわゆる、取引を仲介するサービスプロバイダーである。これまでの融資額は、プロジェクト1件当たり5万~100万米ドルとなっている。

 どのようにこのサービスが運営されているのだろうか。まず、プロジェクト開発業者が、太陽光発電システムの建設・運営用の資金調達をMosaic社に依頼する。Mosaic社は、依頼のあった案件の中から、「デットファイナンス(債券発行による資金調達)」をするプロジェクトを決める。選ばれたプロジェクトは、Mosaic社のWebサイトに掲載し、資金を集める。融資に興味のある個人投資家は、Webサイトでプロジェクトの一覧と年間利回りや返済期限を見ることができる。

 この他に、投資判断の基準となる重要な情報が、Webサイトを通して提供されている。例えば、どのメーカーの太陽電池モジュールを何枚使っているか、どのメーカーのパワーコンディショナーか、どのEPC業者(EPCは、engineering(設計)、procurement(調達)、construction(建設)の意味)がどの施工会社に工事を委託するのか、プロジェクト開発業者の抱えている負債と資産の金額、プロジェクトの補助金の有無、全量固定買い取りの場合は売電期間と売電単価、買い手となる電力会社などである。

 カリフォルニア州に建設された地上架台式の322kWの太陽光発電システムを例に見てみよう。プロジェクトの一部の29万7790米ドルを年金利6.5%、返済期間12年(144回支払い)で融資を公募した。太陽電池モジュールは中国UpSolar社が872枚、中国LDK Solar社が276枚を提供している。パワーコンディショナーは、米Advanced Energy Industries社が500kW品を提供。EPCはPanasonic Corporation of North Americaである。プロジェクト開発業者は、現在1990万米ドルの負債を抱えている。発電した電力は、地元の米Pacific Gas & Electric社が、20年契約で平均0.10898米ドル/kWhで買い取る。こうした情報を、Webサイトに掲載した。

 資金調達を終えて建設を済ませ、運転を開始すると、プロジェクト開発業者は電力会社に電力を買い取ってもらう。ここで得た資金を、Mosaic社を通して投資家に月々返済していく。

 仲介するMosaic社の収入源は2種類ある。一つは、プロジェクト開発業者に課する融資取組手数料(origination fee)だ。開発業者が融資(主に固定金利型)を得た時に発生する。金額は融資額の1~4%程度のようだ。

 もう一つは、投資家に毎月課金するプラットフォームサービス料(platform fee)である。このサービス料は年間利率1%(月平均利率0.0833%)。投資家がMosaic社用に開設した投資用口座に課金する。

 プロジェクトが利率6.5%で融資を得た場合は、投資家の見返りは6.5%からサービス料の1%を差し引いた、5.5%になる。Mosaic社によると、年間利回り見返りは4.4~6.38%のようだ。この利率は基本的に、米国財務省中期証券を上回り、米国財務省長期証券とS&P500株価指数と同等の数値である。