前回の半導体製造装置の記事では、微細化の限界が従来以上に重たく半導体にのしかかり、業界の技術開発動向にも大きな影響を与えている点について説明した。業界が向かう七つの方向について、今回は微細化実現のための高誘電率ゲート絶縁膜/メタルゲート(high-k/metal gate:HKMG)やFinFETの導入について解説したい。

high-kゲート絶縁膜/メタルゲート

 微細化によるトランジスタ(ゲート)の性能の劣化を防ぐのが、米Intel社などが導入しているhigh-kゲート絶縁膜とメタルゲートである。high-kゲート絶縁膜技術とは、一般的に絶縁膜に使われるSiO2よりも比誘電率(k値)が高い物質を使用した膜である。

 high-kゲート絶縁膜が必要になる理由は、ゲート絶縁膜がある程度以上薄くなると、トンネル効果によってソースとドレインの間の電子が、ゲート絶縁膜の上に漏れてくる可能性があるからである。また、今のゲート絶縁膜を薄くしないと、ゲートの下の電子がゲート側に上がってこないが、k値が低いためにゲートの性能が劣化し、半導体デバイスの性能が悪化してしまう。

 しかし、より比誘電率が高い材料、つまりhigh-k材料をゲート絶縁膜に使用することで、(1)トンネル効果を防止できるだけの厚さを持ち、(2)半導体の電子の移動度を下げないだけの特性を持ったトランジスタを形成することができる。

 つまり、high-k材料をゲート絶縁膜に使用することで、ゲート膜厚を薄くせずにゲートの特性を改善できるのである。ただし、ゲート材をhigh-k化するとゲート電極を、ポリ・シリコンではなくメタルにする必要がある。

 商業ベースに乗せられるコストパフォーマンスを持ったhigh-kゲート絶縁膜に最適な材料とプロセス技術を目指した開発は続いており、特に先端技術の導入に積極的な先端ファウンドリーから、徐々に採用が広がろう。

 具体的な形成プロセスは公開されていないが、我々はダマシン・ゲート法が採用されていると考える。製造プロセスでは、米Applied Materials社、日立ハイテクノロジーズに加えて、日立国際電気が関与している可能性が高いと推定している。さらにゲート・プロセスのノウハウを数多く持っている東京エレクトロンのFTPベースの装置がhigh-kゲートでは有力視されている。これは逐次プロセスが可能で、多様な成膜、ALD(atomic layer deposition)、アニール・プロセスの構築が可能なためである。