任天堂が苦境に陥っている。2014年1月17日に、同社は、2013年度通期(2013年4月~2014年3月)の業績予想を下方修正した。これまで9200億円と予想していた連結売上高を、5900億円に引き下げた。営業損益は350億円の赤字、純損益も250億円の赤字に修正した。同社の不調は2013年度に始まったわけではない。2011年度から営業損益は赤字に転落。2012年度も同様だ。つまり、今期2013年度も含めると、営業損益は3期続けて赤字になる。

 赤字の直接的な理由やそれを裏付ける数字は各メディアが報じているとおりで、端的に言えば、「Wii U」や「ニンテンドー3DS」の本体と対応ゲームソフトが計画よりも売れていないことが原因だ。特にWii Uの状況は厳しい。2013年度のWii Uの通期の販売台数は当初予測の900万台だったが、280万台にまで引き下げた。当たり前だが、ゲーム機本体が売れなければ、対応ソフトも伸び悩む。

 一方で、2013年11月に発売されたソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の「PlayStation(PS)4」や米Microsoft社の「Xbox One」の立ち上がりは順調だ。PS4の場合、店舗などを通じて消費者に販売した実売台数が2013年12月28日時点で420万台に達したという。SCEはPS4の発売前に、2013年度中(2014年3月まで)に500万台を目指すとしており、その目標が達成される可能性は高い(関連記事1)。

 Xbox Oneも、2013年12月までの販売台数は390万台である。Xbox Oneの方がPS4の発売日よりも1週間遅く、販売地域も限られているのでPS4並みの売れ行きとも言える。このように、PS4やXbox Oneの売れ行きが好調なことから、さらに任天堂の不調さが際立つかたちになっている。

 本ブログでは、任天堂の不調の原因を細かく述べるつもりはない。それよりも、2014年1月30日に同社が開催する経営方針説明会に関心があるので、いちゲームファンとして「こんな内容が発表されたらうれしいな」という“期待”を、同説明会前に書いておきたい。いわゆるファミコン世代(30~40歳代)である筆者は、ファミコンはもちろん、「バーチャルボーイ」まで購入した“任天堂ファン”である(バーチャルボーイは諸事情で中古購入でしたが…)(関連ブログ)。

 任天堂に期待したいのは、「おもちゃや」への回帰である。ゲーム機は最新のエレクトロニクス技術や情報通信技術を盛り込んだものだが、いまだに任天堂を「ゲーム機メーカーというよりは、おもちゃやさん」(あるアナリスト)と呼ぶゲーム業界の関係者は多い。それは任天堂がゲーム機を作る前からさまざまな玩具を開発し、販売していたからである。

 玩具メーカーは、玩具に最新のエレクトロニクス技術や情報通信技術をいち早く利用することは非常にまれだ。むしろ既に他の分野で採用されて安価になった技術を上手に使う「アイデア勝負」の世界である。いわゆる、「枯れた技術の水平思考」である。

 その体現者が、元・任天堂の故・横井軍平氏(1996年に任天堂退社)なのは有名だ。同氏は「ゲーム&ウォッチ」や「ゲームボーイ」の開発者として著名だが、ゲーム機だけではなく、「ウルトラハンド」や「ラブテスター」、「光線銃SP」、「テンビリオン」といった玩具も開発している。

 要は玩具メーカーのDNAを生かして、30~40歳代でも楽しめる大人の玩具を任天堂に作ってもらいたいわけである。具体的には、ユニークなスマートフォン/タブレット端末用の周辺機器を作ってほしい。ただ、スマートフォンやタブレット端末に一体化できるコントローラーを提供し、それと共にマリオ系のゲームを出してほしいというわけではない(少々期待するところもあるが)。

 いまやスマートフォンの周辺機器ビジネスは花盛りだ。データ通信が高速かつ安価になり、スマートフォンを通信ハブとして利用しやすくなったこと、近距離無線通信技術「Bluetooth」の低電力版「Bluetooth Low Energy(BLE)」が普及してきたこと、ハードウエアの調達コストが下がったこと、クラウド・ファンディング・サービスが整ったことなどから、大手企業からベンチャー企業までがさまざまな周辺機器を開発している。2014年1月に開催された「2014 International CES」では、ユニークなウエアラブル機器やセンサー端末などのガジェットの出展が相次いだ(関連記事2)。

 しかし、いまだにスマートフォンの周辺機器の代名詞となるような製品はごく限られている。そこでぜひ、そういったものを任天堂に開発してほしいと思っている。ゲーム機とも連携可能で、ゲーム機とつながった方がより楽しめる周辺機器であれば、スマートフォンとゲーム機の橋渡し役になり、現在の事業モデルにも合うだろう。加えて、周辺機器とゲームを1対1対応させる、つまりゲームソフト1本、あるいはゲーム1種に対して1台の安価な周辺機器を紐付けるかたちにすれば、ゲームと共に売れる。

 例えば、Wii U向けに活動量計「フィットメーター」があるが、これがスマートフォンと連携できればいいのにと、個人的には考えている。

 周辺機器同士も連携可能で、その数が増えるほど新しい遊びができる機能もほしい。子供はDS、親は任天堂のスマホ向け周辺機器を使い、親子の交流もできそうだ。

 これまで任天堂は自社のゲーム機に向けてさまざまな周辺機器を開発してきた実績がある。こうした経験を生かして、子供だけでなく、30~40歳代に響くユニークな「おとなのおもちゃ」を開発していただきたい。というわけで、1月30日の発表を楽しみにしています!