NEアワード候補技術紹介(2):
同時送信型の省電力マルチホップ・ネットワーク

東京大学 先端科学技術研究センター 教授の森川博之氏(右)と助教の鈴木誠氏(左)

 東京大学 先端科学技術研究センター 教授の森川博之氏の研究グループは、無線マルチホップ・ネットワークにおける同時送信型プロトコル「Choco」を開発した。Chocoは、ルーティング(経路決定)が不要な同時送信型プロトコルの一種。橋梁や農場などに設置した多数のセンサーノードからデータを収集するといった用途を想定する。

複数ノードが同期して発信

Chocoの実証実験を行うセンサー端末の一例

 同時送信型のマルチホップ・ネットワークは、通信パケットを受信した一つまたは複数のノードが即座に転送し、それを受信したノードがさらに転送するという形で通信パケットをリレーしていくものである。複数のノードが同期して無線信号を発する「建設的干渉」によって、受信信号が乱れないようにする。Chocoはこの同時送信型プロトコルの一種であり、高い信頼性と消費電力の低さを両立できるように設計した。

  「センサーネットワークによく使われるIEEE802.15.4では、無線回路の送信部と受信部の消費電流が同程度になる。送信部だけではなく、受信部の電源をオフにする時間をなるべく長くすることが望ましい」(東京大学 先端科学技術研究センター 助教の鈴木誠氏)。各ノードの無線通信回路の電源をこまめにオフにすることで低消費電力化を図った。