3Dデータプロセス改革に関してよく受ける質問の中で、まだ本連載のテーマとして扱っていないのが投資対効果である。最終回の今回は、3Dデータを活用したプロセス改革における投資対効果の捉え方について述べる。

 投資対効果に関する質問が出てくる場面の多くが、3D-CADなどの3Dツールの導入や拡大を検討している場面である。その理由は、3Dツールの購入費用や教育費用、習熟のための一時的な効率低下など多額の費用が掛かることであろう。そこで、3Dツールの導入・拡大検討の場面に焦点を当てて勘どころを述べていきたい。

 投資対効果の捉え方は、大きく定量と定性の2つがあるが、3Dツールの導入・拡大検討時は、多くの場合定量的な効果が求められる。そのため、今回は定量的な効果算出について取り上げる。

投資対効果算出の枠組みと対象

 これまでの連載で述べてきたとおり、3Dツールの導入・拡大だけでは効果を獲得することはできない。同時にプロセスを変える必要がある。仮に、プロセスを変えずにツールの導入・拡大のみを行った場合を考えると、効果は非常に小さいものになる。従って、3Dツールの導入・拡大の効果はプロセス改革とセットで考えなければ、算出は難しい。

 一方で、プロセス改革は必ずしも3Dツールの導入・拡大は必須ではなく、場合によっては行わなくても大きな効果が獲得できることもある。このような場合、プロセス改革をセットで考えたことにより、必要性の低い3Dツールの導入・拡大を行ってしまうリスクがある。

 このリスクを回避するためには、3Dデータの活用水準は変えないプロセス改革も考えるとよい。具体的には、図1のような枠組みで考え、(2)の投資対効果で3Dツール導入・拡大の是非を判断する。つまり、(2)が3Dツール導入・拡大の期待効果算出対象である。なお、(A)から(B)だけでなく、(B)から(C)においてもプロセスは変わるため、プロセス改革とセットで考えなければならないことは先に述べた通りである。

図1●3Dデータプロセス改革の投資対効果を検討する枠組み
図1●3Dデータプロセス改革の投資対効果を検討する枠組み
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