40年継続使用で約10円で発電

 出力変動コストを含んだ太陽光発電のグリッドパリティの実現性が高まっているもう1つの要因が、欧州などでは約10年後、国内では約20年後に、発電設備の減価償却の済んだ太陽光発電システムが低価格の電力を提供し始めることがある。FITによって設置されたものだ。

 FITによる買い取り期間である20年を過ぎた太陽光発電設備には、撤去されるものもあるが、十分な発電性能を維持している場合、発電事業を継続する場合も多いと予想される。

 継続するか、撤去するかのポイントは、20年後にどの程度の発電性能を維持しているかになる。この点に関し、中古の太陽光パネルを扱っているネクストエナジー・アンド・リソース(長野県駒ケ根市)の技術者は、「20年間使用したパネルであっても、初期の出力値に比べ70~80%の発電性能を維持しているものが相当数ある」と話す。

 ということは、FITの下で20年間使用して、減価償却が済んだ太陽光発電システムは、PCSの部品など一部の周辺設備を更新すれば、極めて安いコストで発電できることになる。同社の試算では、40年間継続して使用すれば、太陽光発電システムの発電コストは1kWh当たり10円程度になるという。こうした長期的な発電実績が知られてくれば、太陽光発電システムは、世代を超えて利用する公共的な社会インフラとして、市民や自治体主導で設置が進む可能性もある。

 これと並行して10年後には、出力変動に対応するためのコストも、蓄電池の低価格化に加え、電力市場やADRを活用することで大幅に下がっている可能性が高い。そうなれば太陽光発電の電力は、グリッドパリティを余裕で達成し、電気代削減の切り札になっているかもしれない。FITによるメガソーラーブームの陰で、長期的な視点も持った企業は、着々とグリッドパリティモデルに対応した事業戦略を練っている。

この記事は日本経済新聞電子版日経BPクリーンテック研究所のコラム「エネルギー新世紀」から転載したものです。