新モデル創出に期待するドイツ

 世界的には、蓄電池以外のさまざまなアプローチが始まっており、2030年以前に、出力変動コストを含めたグリッドパリティモデルが商用化される可能性が高い。

 ドイツなど欧州の太陽光発電システムメーカーは、次の技術開発テーマとして、太陽光発電システムとBEMS(ビルエネルギー管理システム)など外部EMS(エネルギー管理システム)との連携に力を入れている。ドイツでは、事業場に設置した太陽光発電の電力を自家消費した方が経済的なメリットが高まるよう、すでに政策的に誘導し始めている。その場合、BEMSと連動して事業内の蓄電池や需要制御によって需給バランスを維持する制御が重要になる。

 ドイツは2012年に電力需要の約20%を再生可能エネルギーで賄っており、政府はこの比率を2020年に35%、2050年に80%にする目標を掲げる。すでにあと10年で40%に高めることは可能との調査結果もある。

 ドイツ政府は、2008年~2012年まで実施した「Eエナジープロジェクト」を通じて、高い比率の再生可能エネルギーの利用と低コストで安定的な電力供給を実現させるための技術や制度を検証してきた。

 電力市場とICT(情報通信技術)を活用し、再生可能エネルギーの変動に合わせて需要を調整することで、アンシラリー(需給調整)電源の増設や蓄電池の導入をいかに抑えるかが、全プロジェクトを貫く共通テーマだった。

 結果として、冷却系業務用設備の25%は需要のシフトに活用でき、10%以上の需要増減効果があることが分かった。さらに、電力市場と連携した価格シグナルによる「デマンドレスポンス(DR:需要応答)」の効果は、初期段階ほど大きく、効果を持続するには家電の自動制御など「自動デマンドレスポンス(ADR)」が効果的であること、などが分かった。

 ドイツでは出力変動コストを含んだ再生可能エネルギーの「グリッドパリティモデル」を、電力市場やDR、ADRを組みわせたものと考え、そこでさまざまな新ビジネスが生まれるとみている。太陽光発電システムメーカーもこうした方向性のなかで、自社製品の役割を多様化させ、事業領域の拡大を狙っている。

 国内メーカーでも、海外に太陽光発電用のパワーコンディショナー(PCS)を設置している東芝三菱電機産業システム(TMEIC)は、蓄電池や外部のEMSとの連携など、グリッドパリティモデルをにらんだ製品開発を進めている。また、トヨタ自動車やデンソーが愛知県豊田市で実施しているスマートハウス関連の実証プロジェクトでは、太陽光パネルとHEMS(住宅エネルギー管理システム)、蓄電池、EV(電気自動車)など連携した、太陽光発電による電力を自家消費する仕組みを実証している。

写真3 愛知県豊田市で実証しているスマートハウスの実証ハウス
(出典:豊田市)
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