生体情報モニタや健康関連機器における計測技術の中で、非接触または遠隔測定について、数回にわたり現状分析やその動向について探ってみたい。本来、患者・被介護者・健康な人を問わず、生体情報の収集が非侵襲かつ非接触で可能ならば、被測定者にとっても望ましい状況になる。この種の技術は、ニーズが高い割に研究・開発が遅れていると言わざるを得ず、将来に向け、さらなる革新が期待されている分野と言えよう。

要求と対応技術のギャップが大きい

 生体情報モニタなどの人体を対象としたセンシング技術にとって、「非接触であること」は、より望ましい条件の一つといえる。被測定者にしてみれば、何も装着せずに何らかのパラメータが測定可能なら、自分の動作も自由だし、何の苦痛もない。

 たとえ、皮膚に小さな電極を貼ることでさえ、そのことが長時間になればなるほど、被測定者の自由を奪う上、皮膚のかぶれなどの問題も生じてくる。

 特に、新生児のケースではこの問題が顕著になる。電極を貼るスペースさえままならないことに加え、ひ弱な皮膚にとっては「侵襲性が高まる」結果にもなる。こうした状況を考慮しても、人体から離れたところにセンサが配置できれば、メリットが大きい。

 ただし、ここで厄介な問題が生じる。センシング技術は、「遠隔」という条件を大の苦手とするからだ。そう、離れて測ることは、難題なのである。

 現在の医療機器を概観するにつけ、このギャップの大きさについてはあらためて説明する必要がないくらい「矛盾関係」にある。直接接触から、間接接触、非接触、遠隔接触と段階を踏んでみると、ユーザー側からの要求度は高まってゆく。だが、技術側からすれば、全く逆に難度が上昇してしまう。ここに、非接触センシングの最大の難題が存在している。

難題へのチャレンジが必要

 まずは、医療機器におけるモニタリングの製品例から示そう。下の写真は、新生児用のマットに組み込まれた非接触の乳幼児用無呼吸モニタ(商品名:ネオガード、長野計器製、販売:スカイネット)である。

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ネオガードの本体外観

 新生児モニタリングの要件の一つが「非接触」であることは前述の通りであるが、さらに成人のケースに比較して「循環機能」より「呼吸機能」を重点的にモニタリングすることが必須とされる。

 ネオガードはこの二つの要件を満足する機器であり、マット上の乳幼児の呼吸運動に応じて生じる微小な圧力変動を本体内にある微圧感知センサがとらえる仕組み(下図を参照)。乳幼児の呼吸停止などの異常状況が発生すると、ただちに警報装置が働くよう設計されている。

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ネオガードの原理図

 これまでの新生児モニタは、インピーダンス法などによって胸部に張り付けられた電極から検知する方式が主流だった。従って、本装置のような非接触による測定方式はニーズに対応したうってつけの方式として注目される。

 生体情報モニタは、「非接触」という観点からすれば、まだ駆け出しの段階としか言えないが、こうしたニーズ適応型の方式が普及していくことに、大いなる意義を見い出したい。