パラドックスには、いろいろな種類がある。
本書で扱うあつかうのは「本物のパラドックス」ではなく、物理学のパラドックスだ。
物理パラドックスの内容に入る前に、パラドックスについて簡単に解説しておこう。
そもそも、パラドックスとは何なんだろう?
著者のカリーリ氏は、次のように定義している。
本物のパラドックスは、循環に陥ったり自己矛盾する論証になったりする、あるいは、論理的にありえない状況について述べている、といった言明だ。
本物のパラドックスの実例は、「この文は嘘だ」という短い文だ。
「この文は嘘だ」と公言しているのだから、この文は嘘にちがいない。しかし、「この文は嘘だ」が嘘だとすると、嘘ではない――つまり正しいことになる。すると確かにこの文が嘘だということになり、するとやはり嘘ではないことになる。以下同様で、無限の堂々巡りに陥る。