日本の大学の理工系研究室およびエレクトロニクス分野のスタートアップ企業の研究開発を応援するために日経BP社および日経エレクトロニクスが実施している「NE ジャパン・ワイヤレス・テクノロジー・アワード 2014」。日経エレクトロニクス編集部が、過去1年間に日経エレクトロニクスおよびTech-On!に掲載された技術記事の中から、8件の候補を選出しました。

東京工業大学 浅田研究室
1.42THzで発振する共鳴トンネルダイオード

 東京工業大学 大学院総合理工学研究科 物理電子システム創造専攻教授の浅田雅洋氏の研究グループは、室温で動作し、基本発振周波数が1.42THzと高い共鳴トンネルダイオード(RTD)素子を開発した。これまでのRTD素子の発振周波数の最高値はキヤノンが2013年5月に論文で発表した1.40THz。わずかながらその最高値を上回った。

 RTDは、量子井戸1個を持つ2端子素子。量子井戸中に形成される量子準位によって、I-V特性に微分負性抵抗となる領域が現れる。この領域では交流電界が増幅されるため、LC回路などと組み合わせることで発振回路となる。

 開発したのは、室温で1.42THzの電磁波を発振するRTDと、スロットアンテナと呼ばれるアンテナを組み合わせた素子である。浅田研究室は2012年9月に基本発振周波数が1.31THzの素子を発表していたが、今回は二つのエネルギー障壁の間隔を狭めるなどの変更を加えることで1.42THzを達成した。(2013年12月、Tech-On!掲載)

奈良先端科学技術大学院大学
岡田研究室平行2線路を用いるワイヤレス給電方式

 奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 教授の岡田実氏らの研究グループは、移動中の機器や電気自動車(EV)、産業用ロボットなどにワイヤレスで給電できる「平行二線路を用いたワイヤレス電力伝送方式」を開発した。

 同方式は、磁界共鳴方式に基づく線路型ワイヤレス給電技術の一種。送電器として送電コイルを多数並べるのではなく、平行に並べた2本の導電線(平行2線路)を利用する。受電コイルを近づけた場合に負荷も含めたシステム全体でインピーダンス整合が取れる整合条件を発見したことで実現した。受電器が線路上を移動する場合のシステムのインピーダンス整合条件は、導線の太さや導線間の距離などに加えて、受電コイルの線路上の位置でも変化する。このため、電源に組み込んだ整合器で、システムのインピーダンスを動的に整合することを想定している。鉄道玩具を使って試作した例では、受電コイルのインピーダンスを制御しない状態で、40Wの電力を数%以上の効率で伝送できた。(2014年1月、Tech-On!掲載)