明けましておめでとうございます。2014年1月1日付けで日経ものづくり編集長に就任しました大石基之です。

 「現在、日本の工場はフル稼働状態。大型補正予算やアベノミクスに後押しされる形で公共投資が増えており、民間投資も動き始めている」(ある国内建設機械メーカーの幹部)。こうした声に代表されるように、ここ最近、取材先を回っていると、国内製造業関係者の表情が1年前に比べて総じて明るくなっている様子が見て取れます。釈迦に説法ですが、この1年の間に、それまでの超円高傾向が終焉し円安が一気に進んだこと、および2020年の東京オリンピック招致に成功したことなどが、後押ししています。

 こうした流れの先にある動きとして、2014年は、国内製造業が「守り」から「攻め」へ転じる節目の年になると考えています。その攻め口の1つが、グローバル展開の加速です。例えば、生産拠点のグローバル化が進み、海外の新興国を中心とした成長市場に、日本メーカーが生産ラインを新設・増強する動きが活発化するでしょう。消費地に近い場所で製品を生産する「地産地消」の方針の下、日本メーカーによるインドネシア、タイ、ベトナム、メキシコ、ブラジルなどへの工場進出が一気に加速する方向です。日経ものづくりでは、2014年を通じて、国内製造業によるグローバル展開に関する動きに力を入れて報道していく方針です。

 拠点のグローバル化と並んで、国内製造業にとって2014年の重要なキーワードと言えるのが、優秀な人材の確保です。既に生産拠点などの現場では、人手不足に悩んでいるところが少なくありません。東北地方での復興需要が盛り上がりを見せても、現場に赴く作業員がなかなか集まらないという声もよく聞きます。こうした事態に陥るのは無理もありません。リーマンショックやその後の超円高によって、国内製造業は人件費の圧縮に取り組んできたからです。ここにきて、経営環境が上向いたからといって、そう簡単に都合よく人材を集めることはできません。アベノミクスの恩恵を受けているのは、国内の他業種も同じ。業種を超えた人材の奪い合いが始まっているのです。ある国内メーカーの工場マネージャの方は、「日頃行きつけの居酒屋のママに、『いい人材いませんか』」とお願いしているとか。

 こうした状況を勘案すると、2014年の国内製造業の間では、人の働きやすさを追求する動きがますます活発になっていくと思います。例えば、生産ラインで言えば、現場に笑顔を絶やさないようにする、人が楽に作業できるようにする、といった取り組みに国内メーカーがこれまで以上に力を入れていくとみられます。既に「我々は人からラインを考える」と宣言しているメーカーも出てきています。

 日経ものづくりは、「守り」から「攻め」に転じる国内製造業をこれからも応援していきます。今後ともご指導・ご鞭撻をお願いいたします。