現場の工夫から生まれる予期せぬ利用方法

 同社の取り組みは、現在もさらに進化を継続している。例えば現場で3Dを利用していないスタッフには、パソコンに不慣れな人が多かったが、そこで導入されたのが「iPad」である。CADから自動生成されたXVLは生産管理情報と紐付けられて、iPadで表示可能な形式に自動変換される。これを現場でも参照することができるのである。iPadであれば、ポータルから情報を得ることも手軽にでき、3Dで議事録を確認することも簡単だ。図6にあるように、技術スタッフはiPadで3Dモデル寸法を確認し、現場スタッフとトラブル対応を打ち合わせすることもできるようになった。まさに情報武装して現場に出ていくことが可能になったのである(ポータルから3Dモデルを参照する様子を撮影したビデオを参照いただきたい)。

図6●現場のiPadによる3D活用
図6● 現場のiPadによる3D活用
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 このようにして、現場に3Dで情報を提供する仕組みを整えていくと、現場の工夫によって予期せぬ利用方法も生まれてくる。これを図7に示そう。まず、CADを利用している設計スタッフがXVLを利用し始めた。表示が圧倒的に速く、過去のモデルもすぐに検索できるので、設計の段取りを考えるのに有効な手段だと気付いたのである。さらにCADを使っているCAMスタッフも、加工属性が確認できるという理由でXVLを使っている。iPadの導入では、機械加工スタッフが「持ち運び図面」の代わりにiPadを持ち、現場で3D寸法を確認するようになった。有益な情報が手軽に取り出せるという環境があれば、現場が、自由な発想で独自の効率化を成し遂げるものなのである。

図7●3Dで見る文化の進化
図7●3Dで見る文化の進化
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