現場に醸成された「3Dで見る」文化

 多忙な現場は、現在の仕事の仕方を変えることを嫌がるものである。にもかかわらず、同社で「3Dで見る」という文化が醸成されたのはなぜだろうか。その第1の理由は、ポータルの構築により、どこでも同じ操作で自分に関連する金型の情報が見えるようになったことだろう。そして、第2の理由は、CADで設定した属性も含め、軽快に3Dモデルで確認できるようになったことだ。

 3D活用を推進する同社の荒井善之氏はこう言う。「3DのCADデータがそこにあったのです。これを使わない手はないでしょう」。ただし、設計者は仕事量の増加を嫌う。「設計データを登録すると、CADモデルに必要な座標変換を施し、現場が必要とする構造にモデルを変更した上でXVLに自動変換する仕組みを構築しました。設計者は今まで通りの仕事をするだけで、現場が見たい形で3Dデータを参照できるようになったのです」。

 こうして、3Dで見る文化が現場に醸成されていった。この様子を示したのが図4だ。現場の至るところにパソコンが置かれ、3Dで形状確認をしている。機械加工の現場では、加工スタッフがXVLを見ながら加工手順を確認する。営業スタッフは、受注した金型の形状の大きさをXVLで確認して見積書を作成する。CADより軽快なXVLは設計者からも重宝がられ、現場スタッフを交えた加工領域のレビューにも利用されている。自動化と分かりやすいポータルの提供によって、3Dで見る文化が完全に現場に根付いたのである。

図4●3Dで見る文化の醸成
図4●3Dで見る文化の醸成
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 これをさらに加速したのが、図5に示すような現場に必要な情報を分かりやすく提供する仕組みである。XVLにはブラウザのプラグインとして提供される無償の3Dビューワ「XVL Player」がある。これをカスタマイズすれば、頻繁に利用するメニューだけを表示するなど、自社業務に特化したビューワを作成することが可能だ。同社では、メニューをカスタマイズした上で、基幹のデータベースとの情報統合も実現している。この結果、部品情報や納期情報、加工進捗、作業実績を金型3Dモデルとともに確認することが可能になった。例えば、部品の加工工程の進捗を確認しながら、ボトルネックの作業内容を3Dで確認する、というような使い方ができる。

図5●現場に必要な情報を分かりやすく提供する
図5●現場に必要な情報を分かりやすく提供する
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