今回は久しぶりに再生可能エネルギーを話題にしたい。喜ばしいことに、昨年の今頃とは一変して元気になりつつある日本経済とハイテク業界だが、その流れをさらに加速するために導入が期待される施策の一つが「緑の贈与」である。

 緑の贈与とは「子や孫に対して資産を継承する際に、現金ではなく、風力や地熱、バイオマス、小水力などの再生可能エネルギーを対象とした証券投資や、太陽光発電パネルなどの設備を贈る際に、一定の条件を満たせば贈与税の減免措置が得られる」というもの。

 太陽光発電システムは、固定買取制度の導入によって国内の需要が急増している。大規模な太陽光発電所については、既に予定していた規模を大きく上回る申請があり、既に認可待ちの状態となっている。ここで、外国製太陽電池の使用比率は2013年に入って50%近くにまで上昇している。

 家庭用太陽光発電システムについては、定期預金で運用するよりもはるかに大きな利回りが期待できる。地域によって異なるが、地方公共団体からの補助金や住宅メーカーなどによる値引きなどの条件によっては「やらねば損」というほどの状態にある。

 その一方、市場の拡大を阻害している要因が大きく二つある。一つは宣伝の不足。政府肝入りの政策だが、それだけに「絶対に儲かる」などという宣伝文句は使いにくく、しかも宣伝をしなくてもこれだけ高い利回りが得られる投資ならば、民間業者に任せておけば勝手に市場が拡大するという読みがあったのではないだろうか。ただし、質の良くない業者も存在しているもようであり、消費者もいま一つ業者の言うことを信用しきれないのだろう。

 もう一つの阻害要因は、投資回収期間が10年を超えることである。高齢者は一般に、回収期間が長い投資には警戒心を持ちやすい。一方、若年夫婦層のように10年スパンでの投資を考えられる層は、得だと分かってはいても150万~200万円もの太陽光発電システムにおいそれとは手が出ない。

 緑の贈与は、こうした所得と投資ニーズの世代間ギャップを埋める役割を果たす制度として大いに期待できる。高齢者が保有する巨額の金融資産が実業界へと還流されることで、日本経済の活性化に期待できるわけだ。高所得の高齢者とその家族は相続・贈与税の減免と、預金よりも利回りが高く株式よりもリスクが低い資産が得られるというメリットがある。さらに、太陽電池業界は製品の需要増、国は雇用増と売上増による税収の増加に期待できる。

 我々は今後15年間で、緑の贈与による高齢者層から孫世代への所得の移転が16兆円生じると考える。このうち、家庭用太陽光発電システムの購入が5兆円、グリーンファンドのような再生可能エネルギー事業を行うSPC(特定目的会社)の投資ファンドの購入が11兆円と予想する。1000万円以上の金融資産を持つ60歳以上の世帯は770万世帯弱、このうち緑の贈与に興味を持つ比率が70%、かつ、孫への贈与を考えている比率が30%とみている。もちろん、家庭用太陽光発電については片方の親からしか贈与を受けられないので、1件当たりの設置価格を180万円とすると1.4兆円程度のポテンシャルがある。制度発効後の最初の3~4年で、これらのポテンシャルの大部分が吐き出されることとなろう。これに毎年高齢者に加わる世帯からの贈与が加わる。

 次に、制度が定着して導入初期の盛り上がりが一服した後の贈与規模を考える。日本の人口動態を考慮すると、年間85万世帯程度が高齢者層の仲間入りをすると考えられる。このうち、貯蓄額が1000万円を超え、数百万円単位での贈与を行うのに十分な経済的余裕がある世帯数は36%。さらにこのうち70%が現段階で緑の贈与を利用したいと考えており、孫の平均人数は3.6人、持ち家比率は28%である。また、制度としての緑の贈与の認知が進んで定着すれば、利用率が70~85%に上昇する可能性は十分にあろう。なお、年間13万世帯が子や孫への太陽光発電への贈与を考えると仮定した。

 家庭用太陽光発電システムだけを取っても、その経済効果は我々の試算では間接効果まで含めて8.1兆円、雇用創出効果は48万4000人×年となろう。今後15年間で11GWを超える太陽光発電システムが新たに設置される計算になる。これは2013年初の日本の太陽光発電システムの累計導入量の1.5倍を優に上回る規模である。また、この15年間に原油の輸入削減額として1.6兆円弱(1バレル当たり102米ドルで算定)の効果が見込まれる。