11月19日に開催されたモバイル市場に投資をしているベンチャー投資家のパネル会議
11月19日に開催されたモバイル市場に投資をしているベンチャー投資家のパネル会議
左からIDC社Group VP & GM(Digital Media & Consumer)のDanielle Levitas氏、Storm Ventures社Founding General PartnerのTae Hea Nahm氏、Granite Ventures社Managing DirectorのEric Zimits氏、Venrock社PartnerのSteve Goldberg氏、Relay Ventures社PartnerのJohn Occhipinti氏

 シリコンバレーのベンチャー投資家は、伝統的にバイオテクノロジー技術に特化した人以外は、医療関連技術に興味を持たないと言われてきた。医療製品は米国市場で販売する前に米国食品医薬品局(FDA)の許可が不可欠で、許可を得るプロセスに時間がかかってしまい、ベンチャー投資家が望む投資資金の回収タイミングに合わないからだ。

SFテレビ番組「スタートレック」に登場した医療装置「トライコーダー」
SFテレビ番組「スタートレック」に登場した医療装置「トライコーダー」
写真はTV番組で使われた装置を模したオモチャ。アマゾンなどでも購入できる。
Scanadu社が開発している医療装置
Scanadu社が開発している医療装置

 しかし、非営利団体米Wireless Communications Allianceが2013年11月19日に開催したモバイル市場に投資をしているベンチャー投資家のパネル会議では、この常識を覆した。参加した4人のベンチャー投資家は揃って、「mHealth」(モバイル+ヘルス)という新分野への興味を熱く語った。例えば、米Relay Ventures社PartnerのJohn Occhipinti氏はFDAの許可が必要にあっても医療装置を手かけているScanadu社(同社のWebサイト)に投資をした。Occhipinti氏によると、同社はSFテレビ番組「スタートレック」に登場した医療装置「トライコーダー」に似た装置の開発を進めている。患者のこめかみに触れるだけで、患者の心拍数や血圧などの多数の情報を取得できるという。「これは医療のやり方を変える」(Occhipinti氏)。

 実は、パネルに参加していてた米Venrock社は医療技術に投資する戦略を取っている。同社PartnerのSteve Goldberg氏によると、mHealthの興味の裏には米国の高い医療コストを下げる目的があるという。「米国では、ヘルスケアのコストを下げることよりも、重要な課題は少ない」(同氏)。こうした背景により、mHealthが膨大な市場になりつつあり、多数の人たちが関心を持っている。「mHealthは今ホットだ」(Goldberg氏)。Occhipinti氏はmHealthのモバイル分野が注目していることについて、いつも患者のそばにあることが重要だと説いた。これで患者から多数の健康データを医者に随時通知ができるようになり、「医者はデータ分析者に変わる可能性もある」(同氏)と語った。

ウェアラブル市場の疑問

 パネル会議では、mHealth分野のもう一つの可能性も示された。それは、現状のウエアラブル市場に対するの疑問だ。今のところ、ウエアラブル市場に出回っているセンサー装置は医療よりもフィットネス市場をターゲットにしている。こうした装置は信頼性が比較的低いといわれ、「ウエアラブルは面白いが、まだ市場が明確になっていない」とOcchipinti氏がいう。

 このパネル会議ではウエアラブルの本格的な市場は、業務用にあるではないかとのコメントが多かった。米Storm Ventures社Founding General PartnerのTae Hea Nahm氏は今のウエアラブル装置に今よりも正確なバイオ・センサーに備えて、「付加価値が高い医療系サービスで利用する。それがウエアラベル製品の未来だと考えている。数年間後にはウエアラブルは人にカスタマイズされた製品になる」(同氏)。