花王で「アタック」や「レイシャス」などの開発に携わった美崎栄一郎氏が、特定の商品がヒットした理由をひも解いていく連載「ヒットの謎解き」。雑誌『日経ものづくり』との連動企画で、Web版では雑誌に盛り込めなかったこぼれ話などを掲載していく。第2回のテーマは、文具/オフィス家具メーカーのプラス(本社東京)が開発した電子ホワイトボード「COPYBOARD」(以下、コピーボード)だ。

 プラスのコピーボードは、ホワイトボードに書いた文字を紙に印刷したりデータ保存したりできる電子ホワイトボード。電子ホワイトボードはいまやオフィスに1台は置いてあるアイテムですが、実はこれを世界で初めて開発したのは、文具/オフィス家具メーカーとして知られるプラスだったんです。発売は1984年。それから30年近くが経過しているにもかかわらず、同社は今でも電子ホワイトボードで50%以上のシェアを維持し続けています。

* 沖電気工業と共同で開発した。沖電気工業とプラスは、同時期に電子ホワイトボードの考案に取り組んでいた。両社は1983年12月に「電子黒板発売」の記者発表会を共同で開いている。

 このロングヒットの理由を本連載の雑誌版でひも解いてゆきました。その終盤で僕は「プラスはコピーボードを『パソコン周辺機器』ではなく、同社が得意とする『オフィス家具』に昇華させたところにヒットの理由がある」としました。雑誌版ではスペースの都合で書き切れなかった部分もありますので、ここでこの点についてもう少し考えてみたいと思います。

上位モデル「COPYBOARD F-20」
上位モデル「COPYBOARD F-20」
スタイリッシュなオフィスにもなじむ外観。外観だけではなく、ユーザーにとって「かゆい所に手が届く機能」が満載なのが魅力だ。詳しくは雑誌版で。

 なぜプラスがコピーボードをオフィス家具に昇華させたことが、ロングヒットの理由になるのでしょうか。それは、オフィス家具はパソコン周辺機器に比べて「価格下落に陥りづらい」商品分野だからです。ちなみにここで言うオフィス家具は、「黒板に近い使い勝手を追求する方向」のこと、対するパソコン周辺機器は、「プロジェクターに近い使い勝手の方向」のことを指します。