まだら模様ではありますが、大手エレクトロニクス・メーカーの業績に薄日が射しています。2013年3月期に巨額の最終赤字を出したパナソニックは、住宅や車載関連の事業が好調で2013年4~9月期に黒字に転換。ソニーは同じ期に映画事業が赤字で最終赤字になったものの、スマートフォンが好調なエレクトロニクス事業が黒字転換したことは少し明るいニュースでしょう。

 エレクトロニクス大手8社(日立製作所、ソニー、パナソニック、東芝、富士通、三菱電機、NEC、シャープ)の2014年3月期は全社が最終黒字になる見通し。8社中6社が増益や黒字転換を見込んでいます。2013年はエレクトロニクス大手、特に家電大手にとってどん底からはい上がる1年だったと言えそうです。

 そうした時代の気分もあってか、Tech-On!のテーマサイト「家電・PC」の2013年年間アクセスランキングでは、ヒット商品の成功の秘密に迫った記事が人気を集めました。年間ランキングの上位20位中、半分の10本をヒット商品の開発ストーリーが占めました。3位と5位、10位、15~16位、18~20位は松下電器産業(現・パナソニック)による「携帯型DVDプレーヤの開発」が、4位と11位はパイオニアによる「通信機能内蔵カーナビの開発」がランクインしています。

 いずれも、10年以上前に発売された製品。「ポストパソコンはデジタル家電で、我々の時代だ」と、日本の家電メーカーがかなり威勢が良かった時代でした。当時の熱気を紹介する内容は、Tech-On!読者の皆さんにもいろいろと感じるところが多かったのかもしれません。

 7位に入った「29週連続首位の小型複合機は、いかにして生まれたのか」は、セイコー・エプソンが2012年9月に発売したインクジェット複合機の記事です。ヒットにつながった小型化を実現した技術を解説しています。小型化を武器にしてきた日本メーカーの面目躍如といったところでしょうか。

 興味深いのは、8位に入った「プラズマクラスターやナノイー自体にはほとんど殺菌効果がないことが明らかに」のニュース。日本メーカーが発売する空気清浄機の売り文句になっている「殺菌や脱臭といった効果をうたう粒子」の話題です。日本感染症学会の総会で、「この粒子には殺菌効果がほとんどなく、実際の殺菌は同時に発生するオゾンが担っている」という内容の論文が発表されました。

 「PM2.5」による大気汚染が深刻な社会問題になっている中国では、日本メーカーの空気清浄機が売れているといいます。ヘルスケアや医療は、エレクトロニクス大手が大きく舵を切り始めた開拓分野です。粒子による効果の是非の議論はもちろんですが、より大切な視点は機能が人間の感性や身体に近付くほどにますます同じような問題がエレクトロニクス企業の周囲で増えていくだろうということ。2013年には、美白化粧品の白班被害も大きな話題になりました。似た領域にエレクトロニクス企業の製品やサービスが踏み込んでいることを意識する必要がありそうです。

 そして、1位は、12月3日に発表したTech-On!の総合ニュースランキングでもトップだった「デジカメの革命児「GoPro」、300万台超を売った人気の秘密」でした。「アクションカメラ」という新分野を切り開いた「GoPro」は、デジタルカメラ大国だったはずの日本メーカーのお株を奪う商品です。「こんなにニッチな印象の商品がなぜ…」「コンパクト・カメラは売れなくなったはずなのに…」など、多くの「なぜ」が頭に浮かぶヒット商品でした。

 ヒットの秘密は、日本メーカーが得意としてきた「大量生産・大量消費」という「マス」をターゲットにするマーケティングに背を向けた、全く逆の開発スタイルにあります。消費者の共感が重視されるソーシャルメディア時代には、「大量に売るために、大量を捨てる」という難しいバランスの製品開発がカギになるという新しい方向性を見せてくれた商品でしょう。

 来る2014年の年末に発表するであろう年間ランキングでは、日本メーカーの最新ヒット商品が成功事例としてトップに輝いていることを期待しています。