Bluetoothの話が一段落したところで、今回は少しPAN(Personal Area Network)についての話をしたいと思います。

PANとは何か

 PANとはPersonal Area Networkの略とされ、無線PANを特にWPAN(Wireless Personal Area Network)と呼んだりもします。しかしLANとPANは何が違うのでしょうか?一般的には、LANがビル1軒や1フロアをまるごと、複数ユーザーが使う多数(数十~数千台)の機器を相互接続するネットワークであるのに対し、PANは部屋一つとか机一つくらいの範囲で、一人のユーザーが複数(せいぜい十数台)の機器を接続するためのネットワークとされています。とはいえLANとPANの境界線は非常に曖昧で、技術的に隔絶した境界があるわけではありません。

 あえてPANを特徴付けるなら、LAN用機材に比べてシンプルで低価格、設定運用が容易でアドホックな機動的運用に優れる性格を持つ(というより、そういう性格が求められる)ことになるでしょう。とはいえ、もともとLAN用だった機材が普及して安価になったため、実質的にPANとして使われている例も少なくありません。その代表例は100BASE-TXのEthernetとWi-Fiベースの無線LANでしょう。

 Ethernetも昔の10BASE-5では水道のホースみたいにゴツい同軸ケーブルに専用工具で穴をうがってトランシーバをネジ留めし、これまたゴツい15ピンのAUIケーブルで本体と接続するという、およそ個人使用に向いた代物ではありませんでした。その頃はPhoneNetだとかStarLANだとかLocalTalkだとか「我こそは個人・家庭向きの簡単安価なネットワークなり」をうたう製品が群雄割拠する状態でしたが、使い勝手の良い10BASE-Tが登場して価格が下がると、これらの「LANもどき」製品群はあっという間に消えてしまいました。有線インタフェースで、今も残っている「PANらしきもの」はUSBやHDMIですが、どちらかというと特定機能に特化したインタフェースで、これをPANと呼んで良いものかどうか疑問が残ります(しかもHDMI1.4では100BASE-TXの信号が流れてますし)。PANになり得た有線汎用インタフェースにはシリアルSCSI(IEEE1394)がありましたが、結局広く活用されないまま静かに消え去ろうとしています。